就職後3年以内に退職してしまう早期離職も「早期退職」の一つとして捉えるネット記事が増えています。
「定年前に会社を辞めること」という意味では早期離職も早期退職も一緒です。
ただ、「制度としての早期退職」と早期離職では受けられるメリットが変わってきます。
この記事では「制度としての早期退職」と「3年以内の早期離職」の違いと、それぞれのメリットデメリットについて解説していきます。
早期退職と早期離職の定義
早期退職の定義
早期退職とは、一般的には定年を迎える前に自発的に退職することを指します。
通常、定年退職は60歳や65歳と設定されている場合が多いですが、それよりも早い段階で自らの意思で退職を決意することを「早期退職」と言います。
理由は様々で、労働環境や人間関係の問題、健康上の理由、ライフステージの変化などが考えられます。
また、企業がコスト削減や組織再編成の一環として早期退職を奨励するケースも少なくありません。
その際には早期退職優遇制度が設けられ、退職金の上乗せや再就職支援などのメリットが提示されることが多いです。
早期離職の定義
一方、早期離職とは、新卒採用や中途採用で入社した社員が短期間、通常は3年以内に退職することを指します。
特に新卒の早期離職が問題視されることが多く、その背景には仕事内容のミスマッチや組織の雰囲気になじめない、新しい環境に対するストレスなどがあります。
早期離職は個人だけでなく企業にも大きな影響を与え、人材流出や採用活動のコスト増加などが問題となります。
早期離職を防ぐためには、企業側の働きかけや就職活動時のミスマッチの防止が重要と言えるでしょう。
早期退職と早期離職の主な理由
早期退職の理由
早期退職の理由として、主に以下のようなものが挙げられます。
1. 労働環境や労働時間に対する不満
・過度な労働時間や職場環境が悪い
・人間関係の問題
2. 健康上の理由
・体調不良
・精神的なストレスによるパフォーマンス悪化
・体力面の衰え
3. ライフステージの変化
・育児や介護により、時間が足りない
・故郷に戻る
4. 希望退職・退職勧奨など人員削減の対象となる
早期退職制度は企業にもよりますが、40代以降のミドル・シニア世代を対象としています。
その世代は若手に比べて体力面での衰えやストレスを感じる場面が多く、「このままの仕事量で定年まで勤め上げるのは無理」「部下と経営陣の板挟みのストレスに耐えられない」と考えるようになります。
また、最近は経営効率化の一環で「一生ヒラ社員のままで良い」「定年までしがみつきたい」という社員を希望退職や退職勧奨で退職させる企業が増えてきています。
一昔前のような「大企業に入れば一生安泰」ということはなく、最近のサラリーマンは常に結果を出し続けることを要求されます。
企業からの期待に応えられない社員は「どうぞ辞めて他の場所で活躍してください」とばかりに放り出すのが最近の風潮です。
早期離職の理由
早期離職の理由も早期退職と似ていますが、新卒や中途入社から間もない頃に特有の問題も関わっています。
若手社員が不満を抱きやすいポイント
- 職場環境や業務内容のミスマッチ
- 入社前に期待していた社会人生活とのギャップ
- 職場の人間関係
- 研修や教育制度が不十分
- 給与や福利厚生への不満
- 将来のキャリアパスの不透明さ
特に若年層にとっては、将来の成長や発展が見えない職場で働くことに対する不満が高いです。
近年の新入社員は、以前の世代と比べてワークライフバランスを重視する傾向が強まっています。
待遇や働きやすさを求める一方で、企業理念や事業の将来性への期待は低くなっているのが実情です。
統計データを見ると、新入社員の3人に1人が入社3年以内に離職しているという深刻な事態が浮き彫りになっています。
特に小規模企業や飲食・サービス業で離職率が高い傾向にあります。
早期退職のメリットとデメリット
早期退職のメリットは通常の退職金にプラスした上乗せ退職金をもらえることです。
貰える額は企業や年齢によって変わりますが、大手企業ならば1,000万円以上の上乗せもよくあります。
貰える金額については、福利制度として恒常的に運用している早期退職の場合は会社に問い合わせたり、早期退職に関する規約を見ればわかります。
注意したいのは、恒常的に運用している早期退職制度を利用した退職は自己都合退職になることです。
希望退職や退職勧奨は会社から退職を働きかけるため会社都合になりますが、恒常的に運用している早期退職は社員側から働きかけて利用する制度のため自己都合扱いとなります。
早期退職=会社都合退職と思い込んでいて、離職票の退職事由欄やハローワークの窓口で驚くパターンが結構あります。
- 労働環境や時間に対する不満からの解放
- 新しいキャリアをスタートできる
- 割増退職金や再就職支援を受けれる
- 希望退職、退職勧奨ならば会社都合退職となり失業保険の受給額が増える
早期退職のデメリット
- 経済的不安を抱えやすい
- 社会的に孤立しやすい
- 将来の年金受給額の減少
- 健康保険などの負担増
- 再就職の難しさ
早期離職のメリットとデメリット
早期離職の場合は職場に対する不満やストレスから早々に開放されることが最大のメリットでしょう。
特に労働環境が劣悪なブラック企業に入ってしまった場合は、抜け出せなくなる前に見切りをつけて辞めることは問題ありません。
新しい会社で笑い話にでもして昇華してしまいましょう。
問題となるのは短期間に何度も転職を繰り返す場合です。
一度や二度の転職ならば今時珍しくなくなってきましたが、1~2年の短い期間に何度も退職・転職をしているのはあまり良い印象を抱かれません。
また、中途採用は基本的には能力が求められます。
新卒時に受けるようなビジネスマナーは知っていて当然となるので、転職後に教育研修を受けることもありません。
また、案外気づきにくい点として、失業保険の受給資格があります。
雇用保険に入っている場合、退職後は失業手当をもらうことができます。
退職後に失業手当を受給するには、「離職の日以前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算して12カ月以上」あることが条件になります。
もし1年未満で退職する場合はこの受給資格に満たないため、退職後に失業手当をもらえません。
早期離職のメリット
- 労働環境や時間に対する不満からの解放
- 新しいキャリアパスを模索できる
- 若ければ求人がたくさんある
早期離職のデメリット
- すぐ辞める印象を持たれる
- マナー研修、ビジネス研修など、新卒向け教育を受けられない
- 実力が求められる
- 経済的リスクがある
- 1年未満での退職の場合、失業保険を受けられない
せっかくの新卒カード 辞める前にはよく考えて
就職してすぐに会社を辞めたくなった場合、まずは一度自分の感情を切り離して、他人目線でその会社がひどい会社なのか?自分に合っていないのか?を考えてみてください。
自分だけで考えるのが難しい場合は、家族などに話を聞いてもらいましょう。
誰もが認めるようなブラック企業ならば迷う必要はありません。
自分の心身の健康と将来のためにも早めに辞めてしまいましょう。
「自分に合う会社ではない」「自分が輝けない会社だ」という場合はちょっとだけ立ち止まってください。
会社というのはあなたのためにあるものではありません。
自分が輝きたいなら個人で起業するほうが良いです。
起業のリスクを負わずにお金を稼げるのが会社員のメリットです。
そのメリットを受けるためには、自分から会社を理解していくことが必要です。
「自分が頑張れる会社」かどうか、それを見極めるのは数か月や1年では難しいと思います。
辞めたくなると会社の嫌なところばかり気になってしまいがちです。
会社に14年いた筆者もそうで、退職を決めたとたんに会社で嫌だったこととか悪いところなど負の感情があふれだしました。
人間って一度悪感情を抱いちゃうとなかなかその後の関係改善は難しいです。
できるだけ会社の良いところに目を向けて、相互理解を深めていくことが長く会社勤めをしていく上で重要です。