2024年は早期退職・希望退職募集のニュースが何度も流れて話題になっていました。
そこでこの記事では、2024年の早期退職・希望退職の実施状況を振り返り、さらに転職市場に与える影響についても解説していきます。
急増する早期退職の背景とは?
2024年の早期退職募集数は前年比1.5倍
東京商工リサーチの調査によると、2024年に早期退職・希望退職を募集した上場企業の数は57社で、前年の41社から39%増加しています。
また、募集人数も1万9人と、前年比(3,161人)で3倍に急増しています。
年間の募集人数が1万人を超えるのは3年ぶりのことです。
オムロンや資生堂などの大手企業が1,000人越えの大規模募集をしたことは、ニュースでも大きく取り上げられました。
他にも海外も含めて数千人規模のリストラを予告しているコニカミノルタ、日産自動車などの大企業もあります。
どんな企業がリストラを進めているのか
2024年に早期退職や希望退職を進める企業の特徴として、大手メーカーをはじめとした電機機器関連が大きく目立っています。
コニカミノルタ、東芝、富士通などは国内外合わせて数千人規模のリストラをしています。
その他のメーカーも合わせると、電気機器関連で計13社が希望退職を募集しました。
他に目立つ産業として、東北新社などの情報・通信業が10社で計757人、武田薬品など医薬品業が4社で880人の希望退職を募集しています。
ただ、この数字はあくまで募集人数が設定されている企業の合計数です。
人数制限なしで希望退職を募集している企業もあるため、最終的な応募人数はもっと多くなることが予想されます。
早期退職急増の社会的要因と経済的影響
2024年に早期退職や希望退職が急増している背景には、いくつかの社会的要因と経済的影響が存在します。
- 人口減少と少子高齢化による市場縮小
- グローバル競争の激化やインフレに伴うコスト増加
- 急速な技術革新やDX(デジタルトランスフォーメーション)により、従来型のスキルや仕事が不要となる
→過剰人員のリストラに繋がる

実際に希望退職募集の背景に使われた文言として、「グローバル競争の激化」「デジタル化への移行に伴い」「不採算部門の閉鎖」の3つが多かった印象です。
時代に適応できないスキルを持つ従業員や、組織改革を妨げる昔ながらな人員配置の課題が浮き彫りになっています。
そのため、募集条件の拡大によって多様な人材を対象に含め、企業全体で競争力を維持しながら構造転換を進める戦略が進行しています。
黒字リストラが増加傾向
黒字リストラが回復傾向
近年、多くの企業が経営的に余力のあるうちに早期退職や希望退職を募集するケース、いわゆる黒字リストラが増加しています。
先ほどの東京商工リサーチの調査によると、2024年の黒字リストラの割合は全体の59.6%です。
コロナ禍の2020年・2021年は赤字リストラや倒産などのニュースも多く、日本経済は苦しい状況でした。
2022年以降、徐々に経済活動が回復してくるにつれて黒字リストラの割合も戻ってきており、企業が収益状況に関わらず競争力強化を目指す「攻めのリストラ」を始めていることが分かります。

企業が黒字リストラを進める背景には、短期的な利益改善以上に、中長期的な構造改革を目指す狙いがあります。
希望退職を軸に人員整理を進めることで、組織のスリム化や固定費削減を行い、市場環境の変化や新規事業へのシフトを進めていきます。
黒字リストラを進める企業では、積極的に希望退職を募る一方で、業績の健全性をアピールするケースが見られます。
募集対象者の条件が変化
従来は50歳以上、もしくは特定の部門や管理職など、対象が絞られるケースが多かったですが、最近では単純に「〇〇歳以上の社員」ではなく、「〇〇歳以上かつ勤続年数〇年以上」という条件も増えてきています。
特に募集人数が多い場合や、人数の定めがない場合にその傾向があります。
社名 | 募集人数 | 募集条件 |
---|---|---|
オムロン | 1,000 | 勤続3年以上かつ40歳以上の正社員及びシニア社員 |
資生堂 | 1,500 | 45歳以上で勤続年数20年以上の社員 |
ティーガイア | 200 | 45歳以上かつ勤続5年以上の従業員(販売職除く) |
トーアエイヨー | 100 | 勤続 3 年以上の従業員 |
住友ファーマ | 700 | 40歳以上かつ勤続5年以上の社員 |
田辺三菱製薬 | 人数の定めなし | 2025/1/1時点で45歳以上かつ勤続年数5年以上の従業員 |
協和キリン | 人数の定めなし | 研究本部、生産本部 CMC 研究センター、品質本部グローバル CMC 品質ユニットの一部組織の30 歳以上かつ勤続 3 年以上の経営職・一般職・再雇用社員 |
武田薬品 | 人数の定めなし | ・2025年2月28日時点で勤続3年以上の国内従業員 ・「ジャパンファーマビジネスユニット」の全組織と、研究開発部門の一部組織の従業員 |
早期退職がもたらす未来
構造改革で期待される企業の進化
早期退職の増加は、多くの企業が「構造改革」を加速させる契機となっています。
企業は人員削減を単なる経費削減の手段として捉えるのではなく、新しい事業構造や市場戦略を模索するための「変革のステップ」として位置付けています。
希望退職や早期退職の対象が年齢や部門に関わらず拡大している点も注目すべきポイントです。
これにより、従来の固定された組織から脱却し、若手やデジタルスキルを持つ人材に重点を置いた新しい企業文化を形成する動きが進んでいます。
また、これに伴い事業の再編や成長分野への投資を加速させる企業も増え、競争力強化と収益性の向上が期待されています。
一方で、優秀な人材の流出による競争力低下やスキル不足といった負の影響も指摘されています。
このまま早期退職・希望退職が増え続けていくと、日本の雇用市場や経済動向に大きな波紋を投げかけることが予想されます。
退職者の転職・再就職市場に与える影響
早期退職や希望退職で会社を辞めた場合、多くの退職者は他の企業への転職を目指します。
希望退職の募集時には、再就職支援やキャリア相談などの優遇措置が設けられていますが、それでも退職者にとって新たな職場を見つけるのは容易ではありません。
2024年は年間で1万人を超えるミドル世代が転職を余儀なくされたわけですが、このような大規模な人材流動は転職市場に一時的な供給過剰をもたらす可能性があります。
バックオフィスで定型的な仕事ばかりしていた人には、少し厳しい転職市場といわざるを得ません。
ITやデジタルスキルを持つ人材への需要は依然として高く、これに対応できる人材は高評価されやすい傾向があります。
また、経験豊富な元管理職や専門職人材が、スタートアップや中小企業への転職を選択するケースも増えています。
この流れは、大企業に依存しない多様なキャリア形成を後押しする動きとも言えます。
まとめ
2024年を振り返ってみると、早期退職・希望退職を募集した上場企業の数は57社、募集人数も1万9人と、前年よりも大幅に増えています。
このように一気にミドル世代の転職者が転職市場に流入した場合、従来通りのオフィス業務をやってきた経験しかない人は、転職市場で後れを取りやすい状況になります。
再就職を目指す世代に求められるスキルは変化してきています。
従来型の業務経験だけでは職を得るのが難しくなり、採用側が求めるデジタルスキルやコミュニケーション能力が重要視されるようになっています。
この変化に適応するためには、退職者のみならず労働市場全体でのスキルアップ支援が求められるでしょう。
さらに、高齢者雇用の促進を目的とした改正高年齢者雇用安定法も、労働市場の再構築に影響を及ぼしています。
企業は柔軟な制度設計と負担軽減の対応を進めながら、持続可能な雇用と競争力確保の両立を図ることが求められる時代になっています。
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希望退職などの人員削減が行われると、本当は辞めたくないのに退職を迫られることもあります。
希望退職や早期退職を持ちかけられるのは大抵40代や50代、一番お金が必要な世代です。
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