最近、ニュースでも大手企業の早期退職や人員削減という話がよく取り上げられます。
でも早期退職に応じた場合どうなるのか?
実例を知りたくてネット検索をしてもなかなか出てこないですよね。
本記事では筆者が東証プライム上場企業に在籍していた当時に実際にあった早期希望退職・退職勧奨の条件をご紹介します。
希望退職・退職勧奨の募集条件実例
同一企業でも実施回によって募集条件は変わる
早期希望退職や退職勧奨の条件は企業によって大きく異なりますが、同じ企業でも募集回によって条件が大きく変わることもあります。
下表は筆者の在籍していた東証プライム上場、従業員数千人規模のメーカーで実施された早期希望退職・退職勧奨の条件です。
募集期間 | 募集人数 | 対象 | 優遇内容 | |
---|---|---|---|---|
① | 3か月 | 定員の定め無し | 35才以上かつ勤続10年以上の全ての社員 | ・年齢に応じた退職金の割増 (20ヵ月~48ヵ月) ・転職支援制度 応募が遅いと割増額が減るかも… という不穏な発言あり |
② | 5か月 | 140人 | 拠点集約により、通勤・転勤が困難となった社員 | ・年齢に応じた退職金の割増 (割増額不明) ・転職支援制度 |
③ | 3か月 | 100人 | 50歳以上かつ勤続5年以上の管理職 | ・年齢に応じた退職金の割増 (割増額不明) ・転職支援制度 |
④ | 3か月 | 不明 | 勤続10年以上の技術系社員? (告知が無いため条件不明) | ・年齢に応じた退職金の割増 (24ヵ月~36ヵ月) ・転職支援制度 |
筆者が在籍していた14年間で4回実施された記憶がありますが、もしかしたら大々的な募集はなくてもこっそりと他にも募集されていた可能性もあります。
「定年までしがみつく」と豪語していた先輩社員が、突然辞めたり情緒不安定になったりと、今思い出すと不穏な空気が醸し出される時期が合間合間にありました。
ちなみに筆者は勤続14年、39才の時に技術系社員が対象となった下表最下段の④の回で退職勧奨に応じましたが、事務系社員は退職勧奨があったことすら知らない状態でした。
希望退職・退職勧奨の実施傾向
筆者が在籍した企業の募集条件は前項で説明しましたが、実際に希望退職や退職勧奨を実施する時期についてはおおよその傾向というのはどこの企業でも変わらないと思います。
- 中堅より上の世代が対象になることが多い
- 緊急度が高い時ほど対象範囲が広がる傾向がある
- リーマンショックやコロナなどの経済不安がある時期に実施されやすい
- 拠点の統廃合、組織の見直しなど人員整理の一環として実施される
希望退職・退職勧奨の面談
筆者が在籍した企業の場合、希望退職と退職勧奨を併用したような実施形態でした。
というのは、希望退職の募集告知を出しつつ、辞めてほしい人には個別に早い段階で退職勧奨の面談を実施していたからです。
条件に納得して退職に応じる場合はあっさりしたものでしたが、退職を拒否した場合は何度も面談を繰り返してプレッシャーをかけられるものでした。
とはいえ、最終的な決定権は従業員側にあったため、面談のプレッシャーをはねのけ続ければ会社に残留できるため、拒否する人も多かったです。
もし今、退職勧奨をされていて条件に納得できない、会社に残りたいという場合は鋼の意思をもって拒否し続けてください。
希望退職・退職勧奨に応じた場合の優遇内容
筆者が在籍した企業の場合、主な優遇は下記2つでした。
- 退職金の割増
- 再就職支援会社(リクルート社など)を利用した再就職支援
割増金については年齢によって割増月数が決められていましたが、実際に何歳だったら何ヵ月分貰えるのか?ということは声をかけられた社員にしかわかりません。
ちなみに勤続14年、39才だった筆者の退職金の割増は給与24ヵ月分でした。
企業によっては転職活動に集中できるよう、特別に休暇を付与される場合があります。
残念ながら筆者の会社にはこの制度はありませんでした。
早期退職で優遇されたもの 具体例
企業によっては、これまでに挙げた退職割増金や転職支援の他にも早期希望退職で優遇される項目があります。
筆者が在籍した企業の条件を下表に示します。
自己都合退職 | 早期退職 | |
---|---|---|
退職金 | あり | あり |
割増退職金 | なし | あり |
在籍期間分賞与 | なし | あり |
株式報酬(J-ESOP) | 累積ポイントの70%を給付 | 累積ポイント100%を給付 |
年次休暇の清算 | 日額×残日数×0.3で買い取り | 日額×残日数×1.0で買い取り |
再就職支援 | なし | あり |
特別休暇の付与 | なし | なし |
割増退職金
早期希望退職・退職勧奨の場合のみ支給。
支給額は年齢や在籍期間により幅があります。
在籍する企業が企業型確定拠出年金に加入している場合は、割増金の一部は確定拠出年金に移管され、残りの部分を現金として受け取ることになります。
退職後、確定拠出年金の資産を他の企業型DC・DBまたはiDecoに移管する手続きが必要になります。
退職・転職後6か月以上経過すると、国民年金基金連合会(特定運営管理機関)に自動移換されます。
そうなると資産運用はされず、管理手数料だけかかって資産が目減りしていくため、忘れずに手続きをするようにしてください。
転職後の企業のDB・DCやiDecoに移管された部分については定年まで運用して、定年後に受け取ることになります。
https://www.ideco-koushiki.jp/retirement (iDeco公式サイト)
在籍期間分賞与
それぞれの会社の規定にもよりますが、ボーナスの支給は支給日に在籍している社員に限る場合が多いです。
例えば6月と12月がボーナス支給月の場合、3月に退職すると4~9月の上半期分のボーナスは受け取れますが、10~3月までの下半期分のボーナスは受け取れないことが一般的です。
しかし、希望退職や退職勧奨などの会社都合での退職の場合、退職日を本人が決められません。
そのため、支給日在籍用件の取り扱いは許されず、支給対象期間中の勤務期間に応じた賞与が支給されます。
株式報酬
株式報酬(J-ESOP)は、企業が社員に自社の株式を在籍年数や役職に応じて支給する制度です。
筆者の在籍した企業の場合この制度が導入されており、早期希望退職・退職勧奨での退職者は累積ポイントの全額を株式(端数分は現金)として受け取ることができました。
なお、計算に用いる株価は退職日の終値でした。
年次有給休暇の清算
退職日に年次休暇が残っていた場合、早期希望退職・退職勧奨での退職者は満額で買い取ってもらえました。
とはいえ、大抵の人は年次休暇を使って退職日よりも前から出社しなくなるため、あまり関係がない項目かもしれません。
なお、筆者が在籍した企業では、年次有給休暇を買い取ってもらえるのは一般社員のみでした。
再就職支援
早期希望退職・退職勧奨・早期退職優遇制度を利用した社員には民間の就職支援会社などのサービス提供がありました。
再就職支援と一般的な転職エージェントで何が違うの?と思うかもしれません。
再就職支援サービスでは、正社員への転職だけでなく、正社員→非正規転職や事業の立ち上げ、田舎への移住支援など幅広く相談に乗ってくれます。
筆者は退職時、再就職支援の内容をよく理解していなかったため、お断りしてしまいました。
今振り返ってみると、面談受けてみるべきだったなと後悔しています。
特別休暇の付与
転職活動に集中できるよう、特別に休暇を付与される場合があります。
残念ながら筆者の会社にはこの制度はありませんでした。
在籍する企業で実施された過去の早期希望退職・退職勧奨の調べ方
ホームページから調べる
募集人数が多い場合は早期希望退職など人員整理の実施と関連費用を特別損失として計上する旨が企業ホームページで公示されます。
過去の希望退職の実施有無や条件が気になる方はお勤めの企業のニュースリリースやIR情報などで過去の希望退職についてご自身で検索してみることをお勧めします。
なお、募集人数が少ない場合は社内外に向けての告知は無いこともあります。
筆者が応募した回の退職勧奨については応募人数が20人弱(推定)と少なかったためか、退職から半年経過した本記事執筆時点でも企業からの実施告知はありませんでした。
先輩社員に聞いてみる
交友関係の広い先輩、情報通の先輩に聞いてみると、詳細な条件は不明でも「〇年前と×年前にあった」や、「〇〇さんが声をかけられたことがあるらしい」などの情報を貰える場合もあります。早期希望退職は最終的な決定権は従業員側にあり、嫌がる従業員を無理に退職させることはできません。
そのため、比較的年齢が上の従業員の中には声掛けされたものの断って働き続ける人も多くいます。
失礼のない範囲でそういう人に聞いてみると良いかもしれません。
まとめ
筆者が在籍した企業の希望退職・退職勧奨の優遇条件についてまとめました。
希望退職の募集があったとき、検索サイトで実例や体験談を検索しても法務関係や転職サイトのページばかり出てきて困った経験があります。
この記事にたどり着いた人は今まさに会社が希望退職や退職勧奨を公示したところだと思います。
優遇条件については、「退職金の上乗せ」「再就職支援」という記載のみで、募集期間が終わって人事との退職打合せ面談をするまではその他の優遇条件について教えてもらえることはまずありません。
不安の多い中だとは思いますが、この記事が少しでも参考になれば幸いです。
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希望退職などの人員削減が行われると、本当は辞めたくないのに退職を迫られることもあります。
希望退職や早期退職を持ちかけられるのは大抵40代や50代、一番お金が必要な世代です。
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