退職時に「自己都合退職」か「会社都合退職」かは、失業保険の支給時期や金額、退職金に大きく影響します。
とくに次の職が未定の場合は、会社都合のほうが手厚い条件が適用されるため、正しい退職理由の判断はとても重要です。
しかし、会社が「自己都合」として処理していても、状況によってはハローワークに申し出て「会社都合」へ訂正できる場合があります。
この記事では、自分の退職理由を会社都合退職に変更するための手順を紹介し、成功するための具体的な方法と注意点を解説します。
自己都合退職と会社都合退職の違い
退職時に次の職場が見つかっている場合、自己都合退職だろうと会社都合退職だろうと関係ありません。
会社都合退職であることがメリットとなるのは、退職時に次の職が決まっておらず、無職の期間が生じる場合です。
自己都合退職とは
自己都合退職とは、労働者自身の意思によって会社を辞めることです。
例としては、結婚・出産や転職、健康上の理由などです。
▶ デメリット
- 失業給付は、7日間の待機のあとさらに2カ月の給付制限あり
- 給付期間が会社都合より短い傾向
自己都合退職の場合、退職金や失業保険の給付額や期間が制限されることが多いです。
また、失業保険の給付開始まで時間がかかるため、経済的な準備も必要です。
失業給付が早く受け取れるように!
- 2025年4月1日以降に退職
- 離職期間中や離職日前1年間に雇用保険の教育訓練給付の対象となる教育訓練を受けた
上記の条件に当てはまる場合、会社都合退職同様に7日間の待期期間が過ぎるとすぐ受給できるようになります。
会社都合退職とは
倒産やリストラ、希望退職の募集など、会社側の理由で退職を余儀なくされた場合を指します。
「労働者が自己の意思に基づかず、企業側の何らかの都合によって退職させられた」という点がポイントです。
▶ メリット
- 待機期間終了後、すぐに失業給付を受け取れる
- 支給期間が長く、手当も手厚い
- 特別退職金が支給されることも
会社都合退職は、失業保険の給付期間や手当の受給開始時期において自己都合退職と異なり、有利な条件が適用されることが一般的です。
会社が自己都合にしたがる理由
会社が自己都合退職にしたがる最大の理由は、雇用に関する厚生労働省からの助成金が支給されなくなってしまうからです。
特に経営が厳しい中小企業においては、離職理由が自己都合退職であるか、それとも会社都合退職であるかは会社にとっても大きな問題となりえます。
そのため、従業員に対し「会社都合退職では再就職が厳しい」などと圧力をかけて、自己都合退職とする会社は残念ながら多いです。
会社都合退職になる可能性があるケース
明確に会社都合と認められるもの
- 倒産、事業所の閉鎖
- 希望退職や退職勧奨による退職
- 整理解雇やリストラ
この場合、退職理由が会社の都合であることが明白なので、悩むことはないでしょう。
条件によっては会社都合と認められるケース
- 不当な給与カットや労働条件の変更
- 長時間残業(月80時間超など)
- セクハラ・パワハラ
- 更新前提の契約が更新されなかった
- 安全配慮義務違反(例:健康を害する環境下での勤務)
その他にも、会社都合退職に該当する正当な理由は多岐にわたります。
厚生労働省の資料に詳しい基準が掲載されています。
▶ 特定受給資格者となる離職理由の判定基準:厚生労働省
いずれの場合も、具体的な証拠があり、正当性が認められれば会社都合に変更できる可能性があります。
自己都合→会社都合に変更するには?
厚生労働省の判断基準を確認
離職理由の判定について、厚生労働省では下記のように説明されています。
離職理由の判定は、
①事業主が主張する離職理由を離職証明書の離職理由欄により把握した後、離職者が主張する離職理由を離職票-2 の離職理由欄により把握する
②それぞれの主張を確認できる資料による事実確認を行う
その上で最終的にハローワークが判断します。
したがって、事業主又は離職者の主張のみで判定するものではありませんので、離職理由を確認できる資料の持参をお願いしております。
希望退職や退職勧奨などの場合は、離職票にその旨が記載されるため、特に資料がなくても会社都合退職としてすんなり認められます。
問題は労働条件の変更・不利益取り扱い、パワハラ・セクハラなどのハラスメント、その他の正当な理由の場合です。
これらの場合、「不満をもった社員が自分から辞めた」とする会社と、「会社側の問題で辞めた」とする従業員側で意見の食い違いが起こります。
その場合は手ぶらでハローワークに行って「会社都合に変更してほしい」と訂正申請をしても上手くはいきません。
証拠となるメールや音声、書類などを揃えて会社と話し合いをする必要があります。
必要な証拠については下記資料の3ページ目以降に記載があります。
▶ 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準:厚生労働省
会社都合に変更するのに必要な労力や時間・ストレスと、気持ちを変えて次の職を探すのではどちらが良いか、天秤にかけて考えてみる必要があります。
単に会社の待遇改善や仕返しなら、労働基準監督署に相談して、会社に対して指導勧告してもらうという手もあります。
証拠の収集
- 労働条件変更の通知、給与明細、メールなど
- ハラスメントの録音やメモ
- 第三者の証言(同僚・労働組合)
まずは、メールや書類などの文書証拠をしっかり保管しておくことが大切です。
特に、給与明細や会社からの通知、内部メモなどは重要な証拠となります。
また、不当な給与カットや労働条件の変更が行われた際のやり取りについても、すべて保存しておきましょう。
録音や映像の記録
次に、音声や映像の記録を活用する方法があります。
上司との面談、パワハラやセクハラの現場などを録音や映像で記録しておくことは非常に有効です。
これによって、言葉や態度を裏付ける具体的な証拠が得られます。
ただし、録音や映像の記録は法律に抵触しないよう配慮することが必要です。
暴力を振るったり、脅したりしない限りは大体合法の範囲です。
労働組合や専門家への相談
会社都合退職と認定されるためには、証拠収集だけでなく、必要な場合には適切な専門家に相談することが重要です。
個人の力だけで会社と話し合って、自分に有利な条件を認めさせるのは労力の面でも精神面でも大変なことです。
ここでは、労働組合の活用と、弁護士や社労士などの専門家へ相談する方法について解説します。
労働組合の活用
労働組合は、労働者の権利を守るための団体であり、自己都合退職を会社都合退職に変更するための力強い味方になります。
まずは、所属している労働組合に相談し、現在の状況を正確に伝えることで必要なサポートを得ることができます。
会社に労働組合が存在しない場合でも、全国的に活動している労働組合もありますので、そちらに相談してみるのも一つの方法です。
弁護士や社労士への相談
パワハラや不当解雇、その他のトラブルが絡む場合は、労働問題に詳しい弁護士や社会保険労務士(社労士)への相談が適しています。
これらの専門家は、法的な観点から状況を分析し、適切な助言や対応策を提供してくれます。
また、社労士は労働法に精通しており、労働条件の変更や雇用契約に関連する問題について専門的なアドバイスを受けることができます。
専門家への相談は、労働者自身が交渉を行う際の心理的な負担を軽減する大きな助けとなり、適切な手続きを踏むための強い味方になります。
会社との交渉
会社との交渉は、自己都合退職を会社都合退職に変更するための重要なステップです。
この手順では、効果的な交渉を行うための準備と、交渉中に気を付けるべきポイントを詳しく解説します。
交渉のポイント
感情に流されず、論理的に話を進めるよう努めましょう。
証拠を示しながら、自身の主張を根拠づけることで、相手に納得してもらいやすくなります。
例えば、パワハラや不当解雇があった場合、その詳細を明確に説明し、証拠を提供することで会社側の理解を得やすくなります。
さらに、双方にとって納得できる合意を目指す姿勢が不可欠です。
交渉のゴールは、双方が納得できる解決策を見つけることですので、相手の立場や意見にも耳を傾けながら進めることが大切です。
注意すべき点
交渉に臨む上で、いくつかの注意点があります。
まず、法律的な知識をしっかりと持っておくことが重要です。
自分の権利や会社側の義務を理解し、不当な扱いを受けないようにしましょう。
また、交渉が難航した場合には、第三者の仲裁を依頼することを検討しましょう。
例えば、労働組合や労働局といった機関に仲裁を依頼することで、解決の糸口が見えてくるかもしれません。
最後に、文書化の徹底も忘れずに行いましょう。
交渉の内容や合意事項をしっかりと記録に残すことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
文書での証拠があると、相手側も合意事項を守らざるを得なくなります。
ハローワークへの訂正申請
会社都合退職に変更するためには、ハローワークへの申請が必要です。
必要な書類の準備
ハローワークに申請する際に必要な書類は、以下の通りです。
会社都合に変更するための必要書類
- 離職票
- 労働契約書や就業規則の写し
- 労働条件の変更を証明する書類(給与明細やメールなど)
- ハラスメントの証拠(録音や映像など)
- 第三者の証言(同僚や労働組合の証言があると有利です)
必要な証拠については下記資料の3ページ目以降を参考にしてください。
▶ 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準:厚生労働省
これらの書類は、会社都合退職を証明するために重要ですので、しっかりと準備しておきましょう。
特に就業規則は社内でしか閲覧できない可能性が高いので、忘れずに印刷するようにしましょう。
申請の流れ
申請の流れは以下のステップで進みます。
- ハローワークに訪問し、必要書類を提出
- 提出した書類をもとにハローワークの担当者が審査
※追加の証拠や説明が求められることもあります。
- 審査が通れば、会社都合退職として認定され、失業保険の給付条件が変更される
- 認定後、通常の失業保険の手続きと同様に給付を受けることができる
このプロセスはすべてハローワークがサポートしてくれるため、手順に不安がある場合は、事前に相談しておくと良いでしょう。
注意点:労力と時間がかかる
自己都合から会社都合への変更には、精神的・時間的な負担が大きいのも事実です。
会社と揉めたり、ハローワークで証拠をもとに主張しても、変更されないケースもあります。
そのため、気持ちを切り替えて次の職場探しを優先するという選択も、十分に合理的です。
まとめ
会社を退職する際、「自己都合退職」と「会社都合退職」の違いは、働く人の今後の生活に大きな影響を与えることになります。
特に失業保険の給付額や支給期間、さらには退職金にも関わってくるため、その重要性は高いです。
退職理由が会社都合であるにもかかわらず自己都合退職とされた場合、訂正を求める手続きが可能です。
労働条件の変更や不利益取り扱い、パワハラやセクハラなどのハラスメント、さらには事業所閉鎖や解雇などの理由があれば、証拠をしっかり収集し、労働組合や弁護士など専門家に相談することが重要です。
そして、会社との交渉を経て、行政機関への申請を行うことで退職理由を正しく訂正することが可能となります。
ただ、自己都合を会社都合に変えるのはかなりの労力を必要とします。
悔しいかもしれませんが、さっさと見切って次の会社に転職したほうがいい場合もあります。
慎重に準備を行い、専門家の助けを借りながら、最善の結果を目指してください。
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