現代の職場環境は変化の激しさを増しており、業績不振やリストラ、パワハラといった予期せぬ理由で会社都合退職を余儀なくされるケースも少なくありません。
実際に希望退職や退職勧奨などの会社都合退職を打診されたとき、「転職に不利にならないか?」は多くの転職者にとって懸念材料となります。
この記事では、会社都合退職が転職活動に与える影響について取り上げ、メリットとデメリットの両面から見ていきます。
会社都合退職とは?具体的な理由と事例
会社都合退職の理由と具体的な事例を説明します。また、それぞれの対処法についても触れます。
会社都合退職とは何か
会社都合退職とは労働者が自己の意思に基づかず、企業側の何らかの都合によって退職させられることを指します。
具体的な例としては、会社の業績悪化による整理解雇、経営効率化のための希望退職や退職勧奨人員などが含まれます。
これらの退職理由は、企業の経営戦略や経済状況による場合が多いです。
会社都合退職は、失業保険の給付期間や手当の受給開始時期において自己都合退職と異なり、有利な条件が適用されることが一般的です。
業績不振になどよる整理解雇
企業が業績不振に陥ると、人件費の削減が避けられない対策として行われることがあります。
たとえば、メーカーが販売不振によって生産調整を余儀なくされ、最終的に人員削減を行う場合があります。
このような状況では、業績回復の見込みが立たないため、従業員に対して整理解雇の通知がなされます。
この場合、企業側は事前に労働者に対して説明会を開いたり、再就職支援を行ったりする努力が求められます。
希望退職や退職勧奨などによる人員整理
企業が経営効率化を図るための手段として、希望退職や退職勧奨など実施する場合があります。
具体的には、業務の再構築や部門の縮小、機械化の進展によって労働力が余剰となった場合などに行われます。
早期退職の場合、特定の年齢層に対して定年までの期間を待たずに退職を促し、退職金の上積みや再就職支援を提供する場合が多いです。
このような場合、早期退職の条件をしっかり確認し、キャリアプランに影響がないかを検討することが重要です。
会社都合退職が転職活動に与える影響
会社都合退職が転職活動に与えるプラスの影響とマイナスの影響を解説します。
会社都合退職の転職でのメリット
会社都合退職のメリットとしては、経済的な補助や再就職支援が手厚い点が挙げられます。
失業保険の受給期間が長く、給付額が自己都合退職よりも高いことが一般的です。
また、転職市場においても企業側が理由を理解しやすく、新しい職場に対しても不当解雇ではないことを説明しやすいです。
前職が会社都合による解雇であれば、スキルや経験を評価されやすい傾向にあります。
会社都合退職の転職でのデメリット
一方、会社都合退職にはデメリットも存在します。
まず、企業が求める人材像に対してネガティブな印象を与える可能性があります。
安定した雇用を重視する企業では、過去に解雇された経歴がリスクと見なされることがあります。
日本の場合、労働者の権利が保護されているため、よほどの事情がなければ会社側から労働者を辞めさせることはありません。
そんななかで会社都合で退職したということは、「マイナスな要因で会社から解雇された人間なのかもしれない」と疑念を抱かれる恐れがあります。
あらかじめ会社都合退職の事情を説明できるようにしておきましょう。
また、会社都合退職の場合、転職先が見つからないまま退職日を迎える可能性があります。
特に希望退職の場合、募集期間1か月以内という企業が全体の7割です。
そこから退職日までに業務の引継ぎをしつつ転職活動を行い、さらに転職先を確保するのは年齢が上がれば上がるほど難しくなります。
自己都合退職との違いと影響
自己都合退職と会社都合退職の大きな違いは、退職理由が個人の意思によるか、企業側の都合によるかにあります。
普通解雇・懲戒解雇などの理由でなければ、会社都合退職が転職活動時に不利になることはほとんどありません。
自己都合退職の場合、失業保険の受給開始までに一定期間の待機が必要であり、給付期間も短くなります。
一方、会社都合退職の場合、待機期間なしで受給が開始され、給付期間も長くなります。
これにより、転職活動に余裕を持つことができるメリットがあります。
そのため、会社都合退職の方が経済的に安定した状態で次の職を探すことが可能です。
離職票の記載内容が転職活動に与える影響
離職票とは
離職票とは、離職したことを証明する公的な書類で、所属していた企業を介してハローワークが発行してくれます。
離職票には離職理由や離職前の賃金状況が記載されます。
- 被保険者番号、氏名住所など離職者の情報
- 事業所名など企業の情報
- 離職理由
- 被保険者期間算定対象期間
- 被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数
- 賃金支払対象期間
- 賃金支払対象期間における基礎日数
- 賃金額
③の離職理由は倒産や定年、労働契約期間満了、労働者の判断など6種類19パターンあり、該当する離職理由にチェックがつけられます。
更に退職理由欄下部に「具体的事情記載欄」があります。
もし会社都合での退職の場合はここに「退職勧奨による退職」「希望退職による退職」などと記載されます。
離職票の提出
離職票は次の職が決まっていない状態で離職し、失業手当(失業保険)を受け取るときに必要となります。
離職票を使う場面は基本的にハローワークで雇用保険の受給資格を得る時です。
退職後の転職先がすでに決まっている場合は、失業手当を受け取ることはできませんので離職票も不要となります。
場合によっては、転職先から離職票の提出を求められる場合があります。
基本的には転職先に離職票を提出する必要はありません。
離職票には雇用保険被保険者番号や加入期間、雇用保険適用事業所番号など、転職先で雇用保険に再加入するために必要な情報が記載されています。
もし雇用保険の手続きの関係で離職票の提出を求められた場合は、雇用保険被保険者番号を伝えるだけでも問題ありません。
会社都合退職後の転職活動のポイント
会社都合退職後の転職活動における面接対策と、効果的な退職理由の伝え方について具体的に説明します。
面接での効果的な退職理由の伝え方
面接での退職理由の伝え方は、転職活動の成功において非常に重要です。
まず、退職理由をポジティブに伝えることが不可欠です。
面接官に対して、前向きな姿勢や成長意欲が伝わるように表現することが求められます。
また、次の職場でどのようにその経験を活かす予定であるかを明確に伝えることも重要です。
転職理由をポジティブに伝える方法
転職理由をポジティブに伝える方法としては、まず、自分のキャリアビジョンを明確に持つことが必要です。
それを基に、具体的なエピソードや事実を交えて説明することで、面接官に前向きな印象を与えます。
例えば、「前職では企業全体の業績悪化により退職せざるを得ませんでしたが、それを機に自身のスキルを磨き、特定の業界での専門性を高めたいと思うようになりました」といった具体的なキャリアの方向性を示すと効果的です。
また、自身の強みや新たな職場での貢献度についても具体的に説明しましょう。
面接での退職理由の例文
面接での退職理由を伝える際の例文を紹介します。
「前職の業績不振に伴い、退職勧奨を受けたため退職しました。私自身は〇〇という業務を通して、コストの削減や業務効率の向上に一定の成果を上げることができていました。退職となった点は残念でしたが、かねてより興味を持っていた職種に就くチャンスと考え、スキルアップを重ねてこれまで以上に会社に貢献したいと考えています」
といった具合に、自身の対応や新たな職への意気込みを説明しましょう。
普通解雇・懲戒解雇の場合の転職への影響
普通解雇と懲戒解雇について、その定義と転職活動に与える影響、さらに不利を避けるための対策を探ります。
普通解雇とは何か?
普通解雇とは、企業が従業員の勤務成績や能力不足、または職務遂行が期待できないと判断した場合に行われる解雇のことを指します。
この場合、企業は従業員に対して事前に十分な説明と警告を行い、再教育や配転などの解決策を試みた上で最終的に解雇を決定します。
懲戒解雇とは何か?
懲戒解雇とは、従業員が重大な勤務規則違反や法令違反を行った場合に、企業が制裁として行う解雇のことを指します。
具体例としては、業務上の重大な不正行為や勤務態度の著しい悪化、犯罪行為などが含まれます。
労働者にとっては非常に重いペナルティとなり、再就職活動においても大きなハードルとなります。
普通解雇・懲戒解雇は会社都合退職になるのか
雇用保険におけるルールでは、解雇により離職した者は基本的に会社都合退職の扱いになります。
ただし、解雇の中でも労働者の責めに帰すべき重大な理由による「重責解雇」処分を受けた場合は、自己都合退職として扱われます。
重責解雇になる事由には下記のようなものがあります。
- 刑法の規定違反
- 故意または重過失による設備や器具の破壊
- 故意または重過失による事業所の信頼失墜
- 重大な就業規則違反 など
重責解雇の場合は、失業手当受給時に待期期間終了後、更に3か月間の給付制限があります。
普通解雇・懲戒解雇は転職に影響するのか?
普通解雇や懲戒解雇は転職活動において非常に大きな影響を及ぼします。
特に懲戒解雇の場合、前職での重大な違反行為が原因で解雇されたことが明らかなため、新しい職場での信頼関係を築くことが難しくなる可能性があります。
普通解雇においても、解雇理由が業界内でネガティブに解釈されることがあり、再就職の際に障壁となることがあります。
転職先にバレないようにする方法はあるのか?
正直に伝えることが基本です。
全部が全部、理由を説明する必要はありませんが、当たり障りのない範囲で解雇になった理由は伝えましょう。
特に懲戒解雇であることを隠して、単なる自己都合退職として入社した場合は、経歴詐称として再び解雇される危険性があります。
労働者としての信頼性を損なうことは避けられないため、最善の方法は、転職活動で解雇理由を正直に伝えた上で、前経験をどのように改善・発展させたかを具体的に説明することです。
透明性を持って対応することが重要です。
履歴書の賞罰欄に記入するべきか?
履歴書の賞罰欄に解雇の事実を記入するか否かは、解雇の種類や背景によります。
懲戒解雇の場合、賞罰欄に記載しないと経歴詐称となります。
普通解雇の場合、賞罰欄への記載は特に必要ありません。
普通解雇・懲戒解雇を隠したまま入社するとどうなるか?
普通解雇や懲戒解雇の事実を隠して入社し、入社後に前職の解雇理由が判明した場合は新しい職場での信頼を大きく損なうことになります。
さらに、隠していたことが理由で経歴詐称として再び解雇される可能性もあります。
信頼は一度失うと回復が難しいため、最初から正直に解雇理由を伝えることが肝要です。
正直であることが長期的に見ると最善の選択であるといえるでしょう。
まとめ
普通に業務をこなしてきたうえで希望退職や退職勧奨、整理解雇などにより退職した場合、転職活動で不利になることはほぼありません。
自己都合退職に比べて、在職時に転職活動に使える時間が少なく、転職先が決まらないまま退職日を迎えることもあるでしょう。
会社都合退職の強みである「失業給付の給付期間が長さ」をうまく活用して、前向きに転職活動を進めていきましょう。
また、普通解雇や懲戒解雇といった不利な立場にある場合は、最初から正直に事情を説明して信頼関係を築くことが転職活動の第一歩となります。
転職活動においては、常に前向きな姿勢と自己改善の意欲を持ち続けることが重要です。
あなたの転職がうまくいくよう願っております。
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