早期退職関連

早期退職制度の実施状況:対象年齢や募集期間を数字で解説

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有名企業の人員削減のニュースが多く取り上げられますが、大きく報道されないだけで、退職勧奨や希望退職といった会社都合の退職は中小企業でも実施されています。
本記事では最近の退職事情について、データを基に解説していきます。

早期退職・希望退職の実施数は増えている

東京商工リサーチが5月17日に発表した「2024年上場企業『早期・希望退職募集』状況」をみてみましょう。
2024年の1月から5月16日までの期間で「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は27社で、前年同時期の20社に比べて増加しています。
対象人数は4,474人で、すでに2023年の年間募集人数を上回っています。

このままのペースでいくと、2024年の通算では1万人が早期退職・希望退職の対象となる可能性があります

 出典:東京商工リサーチ「2024年上場企業『早期・希望退職募集』状況」

希望退職を打診されるときの流れについて 詳しくはコチラ

 

企業規模別の退職事由の割合

大企業ほど自己都合退職の割合が低い

厚生労働省発表の令和5年就労条件総合調査のデータを基に解説します。
この調査は、常用労働者30人以上を雇用する民営企業(医療法人、社会福祉法人、各種協同組合等の会社組織以外の法人を含む)のうちから、産業、企業規模別に層化して無作為に抽出した約6,400社の回答から成っています。

令和5年中に会社を辞めた人の退職事由別の割合を示したグラフが下図になります。

令和5年退職者の退職事由の割合グラフ
企業規模別 退職事由の割合グラフ
令和5年就労条件総合調査を基に筆者作成)

このグラフを見ると、下記のことが分かります。

  • 企業規模によらず、定年退職が退職事由の半数以上を占める
  • 大企業になるほど自己都合退職の割合が減る
  • 企業規模が大きくなるにつれ、会社都合退職・早期退職優遇の割合が増加する

大企業の方が自己都合退職の割合が少ない原因として考えられるのは、給与や福利厚生などの待遇の良さです。
多くの社員がいることで仕事が分散されやすく、出産や病気などで休職者が出たとしてもある程度カバーできまるため、休職しても復帰しやすい環境であることも一因でしょう。

また、大企業は福利厚生の一環として、早期退職優遇制度(早期定年退職制度)を取り入れている割合が高く普通に自己都合で退職するよりも早期優遇制度を利用して退職したほうが従業員側にとってもメリットがあります。

早期退職制度の導入割合

2021年に東京商工リサーチが行った早期退職・セカンドキャリア制度の導入についての調査結果を基に解説します。
この調査では資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義して、計9,039社分の有効回答を得ています。

この調査によると、89.6%の企業では早期退職優遇制度やセカンドキャリア制度を「導入しておらず、今後導入の予定もない」となっています。
すでに「導入している」企業は349社(3.8%)、現在「導入を検討している」企業は591社(6.5%)となっています。

2021年 早期優遇退職制度、セカンドキャリア制度導入企業の割合
早期退職優遇・セカンドキャリア制度導入企業の割合
(東京商工リサーチ調査結果を基に筆者作成)

 

早期希望退職の対象年齢は何歳から?

早期希望退職・セカンドキャリア制度の対象年齢は50才以上が全体の7割弱の66.5%となっています。
29才以下の若年層も対象となっている企業は、海外の本社サイドの人事施策が強い外資系企業や製薬を中心にしたメーカー、一部小売などです。

2024年夏ごろからは、事業再編に伴って事業部門や工場を丸ごと閉鎖する企業も増えてきています。
そういった場合は、その事業部門に属す全社員が人員削減の対象となるため、20代でも早期希望退職の対象となります。

早期退職優遇・セカンドキャリア制度の対象年齢
(東京商工リサーチ調査結果を基に筆者作成)

 

早期退職の退職金の割増

人事院の令和3年民間企業の勤務条件制度等調査を基に解説します。
この調査は退職一時金制度がある企業のうち、定年前退職者の退職一時金優遇制度がある企業2,702社について調査しています。

下表のデータは大卒総合職正社員をモデルとして、自己都合退職者の退職一時金と比べた場合の各年齢における割増率となります。
早期退職でもらえる割増金は、企業にもよりますが「○○歳までは給料の〇ヵ月分」などと決まっている場合が多いです。

筆者が39歳で退職勧奨に応じた時の割増金は、給料24ヶ月分でした。

45歳50歳55歳
会社都合退職83.7 %74.2 %70.5 %
早期退職優遇95.0 %65.7 %47.9 %
退職金の割増率
 (令和3年民間企業の勤務条件制度等調査を基に筆者作成)

例えば45歳で早期退職優遇制度を利用して辞めた場合、通常の退職金が500万円だとしたら割増金として475万円、合わせて975万円をもらっていることになります。
年齢層が上がるほど割増率が下がるのは、在籍年が長くなるほどもともとの退職金の額が高くなるため、割増率として計算すると不利になるためです。
例えば55歳で早期退職優遇制度を利用して辞めた場合、通常の退職金が1500万円だとしたら割増金は718万円、合わせて2218万円もらえることになります。

早期退職の募集期間と会社都合退職の関係性

希望退職の募集期間は長くても3か月

希望退職の場合、募集期間は約1か月以内とする企業が7割となっています。
一方、早期退職優遇制度の場合は福利厚生の一環として恒常的に運用されているため、募集期間というものはありません。
この募集期間の有無が、退職後に失業手当(失業給付制度)の支給額に大きく影響します。

一般に会社都合退職は、倒産や解雇などで人員整理をされた場合に適応されます。
早期退職の場合の厚生労働省の判断基準は下記のようになっています。

(10)事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧告を受けたことにより離職した者

従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない

①企業整備における人員整理等に伴う退職勧奨など退職勧奨が事業主(又は人事担当者)より行われ離職した場合が該当します。

②希望退職募集(希望退職募集の名称を問わず、人員整理を目的とし、措置が導入された時期が離職者の離職前1年以内であり、かつ、当該希望退職の募集期間が3ヶ月以内であるものに限る)への応募に伴い離職した場合が該当します。

厚生労働省 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準

つまり、恒常的に募集している早期退職優遇制度に応募した場合、自己都合退職となるということです。
退職勧奨の場合は募集期間の長短に関わらず会社都合退職、希望退職の場合は募集期間3か月以内の場合は会社都合退職となります。


早期退職に応募する際は、その退職制度が期間限定のものか、会社都合になるものかは必ず確認してください。

希望退職の公示前から転職活動することが理想

早期優遇退職は自分のタイミングで応募できるため、転職先が決まった状態で応募できます。
一方、希望退職の場合は募集期間が1か月以内が多く、長くても3か月と限られています。
一か月以内に退職を決意して、身の回りのお金の計算をして、転職先を見つけて、退職後の道筋をつくるというのは正直厳しいです。

40歳を過ぎたら今後のキャリアプランを考えて、スキルアップや定期的な求人情報の確認をするようにしていきましょう。

中高年の転職について 詳しくはコチラ

 

まとめ

これまでは定年まで一つの企業に勤める人が多かったですが、これからの時代は転職する人の割合がどんどん増えていくことが予想されています。
会社を辞める際に、早期退職優遇制度や希望退職制度などの退職優遇制度を利用できるチャンスがあるならば是非検討するべきだと筆者は思います。

勤めている企業が早期退職優遇制度を導入しているか、知識の一つとして事前に社内規則などで確認しておけば、いざ退職することになったときの段取りもスムーズになると思います。

同業他社の求人情報もチェックしてみよう

希望退職などの人員削減が行われると、本当は辞めたくないのに退職を迫られることもあります。
希望退職や早期退職を持ちかけられるのは大抵40代や50代、一番お金が必要な世代です。
割増退職金で多くのお金をもらえるとしても、できれば次の会社でも現職と同等か多い給料が欲しいものですよね。
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