地方公務員といえば一生安泰・定年まで勤めるイメージが強いですね。
しかし最近では、制度として早期退職優遇制度を実施する地方自治体が増えてきています。
地方公務員の早期退職の募集条件などが、民間企業とどれくらい違うのか気になっている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、地方公務員の早期退職について、実施の傾向や募集条件、退職金について、データをまじえて解説していきます。
データで見る地方公務員の早期退職
地方公務員の退職事由
総務省発表の令和4年度地方公務員の退職状況等調査を見てみましょう。
この調査によると、地方公務員の退職事由のうち、定年退職が全体の47.2%、通常の退職が43.7%で合わせて9割を占めています。
早期退職は全体の2.6%、退職勧奨と合わせても8%もいないというのが現状です。
なおこの数字は、一般行政職、税務職、海事職、研究職、医療職、福祉職、消防職、企業職、技能労務職、教育職、警察職の令和4年度退職者の合計から算出しています。
地方自治体の早期退職実施状況
全体数 | 早期退職制度が ある自治体 | 早期退職 実施割合 | |
---|---|---|---|
都道府県 | 47 | 14 | 29.8 % |
指定都市 | 20 | 10 | 50.0 % |
市・特別区 | 795 | 228 | 28.8 % |
町村 | 926 | 130 | 14.0 % |
合計 | 1788 | 382 | 21.4% |
(令和4年度地方公務員の退職状況等調査)
地方自治体全体で見ると、早期退職制度がある自治体は全体の21.4%です。
内訳をみてみると、市・特別区、都道府県の実施割合が約30%、指定都市に至っては50%で早期退職を実施しています。
一方、行政として規模が小さい町や村での早期退職実施割合は約14%です。
自治体の予算規模が小さいと早期退職を実施する余力がないとも見えます。
ちなみに民間企業で早期退職優遇制度がある企業は全体の10%程度、大企業では40%といわれています。
ただ、この数値は10年以上前の調査データによるものなので、民間企業も現在ではもっと多くの企業で早期退職優遇制度が実施されていると思われます。
地方公務員が早期退職を選択する理由
公務員が早期退職を選択する理由はさまざまですが、主な理由としては以下のようなものがあります。
- 古い慣習や年功序列制など、組織の体質が合わない
- 仕事内容の単調さ
- 世間からの批判やバッシング
- 給料が低い
- 激務
一口に公務員といっても、行政職なのか教員なのか警察職なのかで当然ながら違いがあります。
仕事が単調で早く終わる部署もあれば、激務や夜勤で肉体的にも精神的にもボロボロな部署もあります。
地方公務員は地域の人のために役立っているという実感ややりがいを感じられる一方で、その地域の住民から「しっかり働け」や「態度が悪い」とクレームを受けたりすることもあります。
いくらやりがいがあっても、クレームやバッシングが重なると辛いですよね。
実際に地方公務員健康状況等の現況の調査結果によると、地方公務員の長期病欠者は10年前の1.8倍に増えていて、そのうち65%が精神的な理由だそうです。
いかに地方公務員のストレスが大きいのかがわかる数値ですね。
地方公務員の早期退職 応募条件と退職金の計算
応募条件
地方自治体によって条件は多少変わる場合もありますが、一般的には「勤続期間が20年以上で、かつ、年齢が45~59歳の職員」という募集条件が多いようです。
非常勤職員や臨時的任用職員、任期を定めて任用されている職員は応募できません。
また、懲戒処分又はこれに準ずる処分を受けた場合も応募できなくなります。
応募の取り下げ
民間企業との大きな違いとして、応募の取り下げが認められていることがあります。
地方公務員の早期退職の募集期間は2~3か月と比較的長めに設定されている場合が多く、途中で気が変わったときに応募を取り下げられる申請書が準備されていることが多いです。
早期退職の募集案内が出て、しばらく転職活動をしてみてから最終判断できるのは良いですよね。
民間企業で応募の取り下げができるのは聞いたことがないので、公務員の厚遇が羨ましいです。
退職金の計算方法
地方公務員の退職金計算は、民間企業の場合に比べると少し複雑です。
地域によって異なることがありますが、基本的なシミュレーション方法を理解することで、退職金を予測することが可能です。
まず、基本的な情報として勤続年数、最終給与、退職時の年齢を把握する必要があります。
これらの情報に基づいて退職金が算出されるため、非常に重要なポイントです。
ネット上に公開されている募集要項に記載されている退職金の計算方法のうち、2パターンを紹介します。
割増率は定年である60歳と現在の年齢差で求めることができます。
60歳までの期間が長ければ長いほど割増率は上がる計算になります。
退職理由別・勤続期間別支給率は、早期退職制度の場合は自己都合退職の場合に比べて優遇されるようです。
調整率は部長や課長、主査などの役職に在籍した期間に応じて支給されますす。
ここらへんの支給額は自治体や職種によって大きく変動すると思われます。
自分で計算するのは面倒という場合は、オンラインの計算ツールで概算を出すこともできます。
Keisan!地方公務員の退職金の計算 https://keisan.casio.jp/exec/system/15481293317068
地方公務員が早期退職を検討する際の注意点
仕事に対する考え方の違い
早期退職後に民間企業へ転職する際は、仕事に対する姿勢が変わることは意識しておきましょう。
公共の利益を守る公務員に対し、民間企業では利益を追求していく必要があります。
民間企業では年功序列制はどんどん廃止され、成果が重要視されています。
転職先の企業文化に適応するためのスキルや心構えをしっかりと構築する必要があります。
希望通りの転職ができるとは限らない
公務員で得たスキルや経験が、民間企業では評価されないこともあります。
特に早期退職に応募するようなミドル世代の転職は厳しいものになることが予想されます。
また、仕事内容だけでなく、福利厚生の面でも注意が必要です。
公務員ほど手厚い福利厚生を受けられる企業はあまり多くはありません。
大企業になれば福利厚生も退職金制度も整っている場合は多いですが、その分求められる仕事のスキルや成果も大きくなります。
転職を考える際には、現在のスキルがどのような職種に活かせるのか、どんなスキルを持つべきなのかを診断したり、キャリアコンサルタントなどに相談することをオススメします。
社会的な信用が低下する可能性
公務員は社会的信用が高い職業です。
公務員の場合、住宅ローンやカードの審査が通りやすかったり、金利が優遇される場合もあります。
転職先の企業規模によっては、社会的信用が下がる場合もあることも心に留めておきましょう。
かといって、社会的信用が下がるかもしれないからと慌ててローンを組むのは止めましょう。
もしかしたら転職によって年収が下がってローンが払えなくなる可能性もあります。
まとめ
早期退職を取り入れる地方自治体が増えてきており、実施状況について関心が高まっています。
早期退職制度が存在する自治体は全体の21.4%ですが、指定都市では50%、市・特別区では28.8%に達しています。
早期退職の応募条件は自治体によって異なりますが、一般的には勤続20年以上、年齢45~59歳の職員が対象です。
応募の取り下げが可能で、募集期間が2~3か月と比較的長いため、転職活動を経て最終的な判断ができるのは大きなメリットです。
退職金の計算は地域によって異なりますが、勤続年数、最終給与、退職時の年齢を基に算出され、早期退職の場合は自己都合退職よりも優遇される傾向があります。
早期退職を考える際、特に民間企業への転職を考える場合は、仕事に対する姿勢や文化の違いを意識する必要があります。
公務員のスキルや経験が民間企業で評価されないこともあるため、特にミドル世代の転職は厳しいものとなる可能性があります。
転職前にスキルの適正や必要なスキルを確認することが重要です。
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希望退職や早期退職を持ちかけられるのは大抵40代や50代、一番お金が必要な世代です。
割増退職金で多くのお金をもらえるとしても、できれば次の会社でも現職と同等か多い給料が欲しいものですよね。
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