早期退職関連

希望退職を迫られたとき、労働組合がない会社で取るべき対策とは?

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筆者が在籍していた企業には労働組合がありませんでした。
そのため、希望退職の実施時に社員全体で声をあげて反発したり、交渉したりすることはできず、退職を迫られた人は泣く泣く辞めていくことしかできませんでした。
労働組合がない場合、会社の一方的な決定に対する異議申し立てが難しくなることから、労働者の権利が守られにくくなるといった課題が生じます。

この記事では、労働組合の役割と、希望退職実施時の労働組合の働き、もし労働組合がない場合の相談先について、詳しく解説していきます。

労働組合の役割

労働組合の団体交渉権の意義

労働組合における団体交渉権は、労働者の権利を守るための非常に重要な権利です。
団体交渉権とは、労働者が労働条件や労働環境に関する問題について、会社と集団で交渉する権利を指します。
この権利を行使することで、労働組合は労働者の集団として会社に対する強い交渉力を持つことができます。
具体的には、賃上げ交渉や労働時間の短縮、福利厚生の改善など、多岐にわたる労働条件の向上を目指した交渉が行われます。

また、会社側の一方的な決定に対して異議を唱え、労働者側の意見を反映させることも重要な役割です。
団体交渉権は、労働者個々では難しい交渉を集団の力で行うことを可能にし、労働条件の改善や労働環境の整備に寄与します。

さらに、労働組合が団体交渉を通じて得る合意は、全ての組合員に適用されるため、平等な待遇を実現するための基盤となるのです。

労働組合がある会社の割合

労働組合が組織されている企業の割合は業界によって異なりますが、日本における全企業のうち約20%が労働組合を有しています。
例えば鉄鋼業や自動車産業など、伝統的な大型産業では労働組合がある割合が高いです。
こうした業界は、歴史的に労働組合活動が盛んであり、長年にわたる労使交渉の結果、労働者の権利と待遇が確立されています。

これに対し、中小企業や新興産業では労働組合の組織率が低いことが特徴です。
労働組合の割合の違いは、業種や企業の規模による労働環境の差異にも起因しています。
労働組合の有無は労働条件や職場環境に大きな影響を与えるため、労働組合がある企業の方が賃金や労働時間、福利厚生などの面でより良い条件が整えられていることが多いとされています

労働組合が減っている理由

労働組合の減少には様々な理由が考えられます。
まず第一に、労働市場の変化が挙げられます。
特に非正規雇用の増加や個人請負契約の増加により、労働者が組織的に交渉する機会が減少しています。

また、企業のグローバル化や競争の激化により、労働組合の交渉力が相対的に低下しつつあります。
企業は労働コストを削減するために、労働組合に対する対応を厳しくする傾向が見られます。

さらに、若年層の労働者にとって、労働組合の重要性が十分に認識されていないことも一因です。
現代の労働市場では個々のキャリアや働き方の選択肢が増えており、伝統的な労働組合の枠組みが個々人のニーズやライフスタイルに合わないと感じることが増えています。
若い世代は労働市場の流動性を求める傾向が強く、長期的な職場に縛られることを避けたがるため、労働組合の活動に対する関心が薄れています。
このような要因が重なり、労働組合の減少を招いています。

希望退職実施時に労働組合がないとどうなる?

労働組合がない場合の影響

労働組合がない企業において、労働者が受ける影響は多岐にわたります。
まず、労働条件の交渉が労働者一人一人に委ねられるため、企業側の一方的な条件提示に対して適切に対応することが難しくなります。
その結果、賃金や労働時間、福利厚生などの労働条件が不利になることが考えられます。
また、労働トラブルや不当解雇が発生した場合、労働者が適切なサポートを受けることが困難となります。
さらに、労働者の権利が侵害された場合にも、労働組合という集団的な力を持たないため、法的な解決手段を取ることが難しくなるケースがあります。

こうした影響を最小限に抑えるためには、労働組合がない場合でも外部の専門家や労働機関を活用し、自身の権利を守るための行動をとることが重要です。

希望退職実施時に労働組合がない場合

労働組合がある場合、希望退職の募集人数の縮小や、退職日、退職金などを労働者側にとって有利にするために、労働組合が交渉を行ってくれます。
労働組合がない企業の場合、個別に会社に対して反発したところで交渉力は低く、結果的に不利な条件で退職を余儀なくされる場合も考えられます。

労働組合がない場合、会社の一方的な決定に対する異議申し立てが難しくなることから、労働者の権利が守られにくくなるといった課題が生じます。

東芝の人員削減計画の例

東芝が2024年春に大規模な人員削減の実施を発表したのは記憶に新しいです。
当初は契約社員の削減やキャリア採用凍結なども含めて、全体で1万人近い人員の削減を予定していました。
しかし、労働側からの反発が強く、最終的には4,000人規模の希望退職に落ち着きました。
その後も会社側と労働組合の交渉が続き、11月末までに退職すれば退職金の特別加算金や2年間の再就職支援という条件が出てきています。

交渉できない職場の末路

筆者が在籍した企業も労働組合はありませんでした。
そのため、希望退職の実施時に社員全体で声をあげて反発したり、交渉したりすることはできず、退職を迫られた人は面談相手や周囲に不平不満を吐いて辞めていきました。
そしてその様子を見ていた社員の間には会社に対する不信感が生まれ、希望退職をするたびに雰囲気の暗い職場になりました。
職場のエンゲージメント調査(従業員のモチベーションや会社に対する愛着心、忠誠心などを数値化して把握するための調査)でも、筆者のいた会社は同業他社水準をぶっちぎりで下回るエンゲージの低さで問題となるくらいでした。
そして人事が「エンゲージが低い原因についてみんなで考えよう!」などと職場ごとに意見の提出を求めてくるものだから、嫌になった若手からどんどん辞めていく悪循環。

会社に対して労働者側が個別に意見を言い、交渉するのはかなりハードルが高いです。
もし会社に労働組合があって退職に応じたくない場合は、労働組合に相談してみましょう。
必ずしも退職を回避できるとは限りませんが、より有利に交渉できるようなアドバイスをもらえるはずです。

労働組合が無い時の相談先

労働弁護士と相談する

労働組合がない企業で働く際には、労働弁護士との相談が重要なサポート手段となります。
労働弁護士は労働法に精通しており、労働者の権利を守るための適切なアドバイスを提供します。
例えば、希望退職や解雇に関する法的問題が発生した場合、その法的根拠や適法性についての判断を仰ぐことができます。
また、契約内容や労働条件に関するトラブルが発生した際には、労働弁護士が中立的な立場から解決策を提案します。
弁護士との相談は初回無料相談を実施している事務所も多く、金銭的な負担を少なく抑えながら利用することができます。
加えて、労働弁護士の多くは裁判所での訴訟や交渉にも対応できるため、問題が深刻化した際には迅速かつ確実な法的対応が期待できます。
こうした専門的な知識と経験を持つ労働弁護士との連携は、労働者が自らの権利を守るための大きな力となります。

労働基準監督署に相談する

労働組合がない企業におけるもう一つの重要な相談先は、労働基準監督署です。
労働基準監督署は労働基準法に基づき、労働条件の適正化を目指して監督・指導を行う行政機関です。
企業が法律に違反している場合、労働者は労働基準監督署に相談することで、是正措置を求めることができます。
例えば、希望退職や解雇に関するトラブル、不適切な労働時間管理、賃金未払いなどに対応しています。


労働基準監督署は全国に設置されており、労働者の相談に応じるための窓口が整備されています。
相談は無料であり、匿名での通報も可能です。
労働基準監督署による調査や指導が行われることで、企業側に対して改善を促すことが期待できます。
こうした公的機関を活用することで、労働者は自らの権利を守るとともに、違法な労働慣行の是正を進めることができます。

  

希望退職を迫られたときの最初のステップ

冷静に状況を把握する

まず最初に行うべきは、冷静に状況を把握することです。
希望退職の案内が突然であることもしばしばですが、感情に流されずに情報を整理することが重要です。
企業側が提示する条件や背景をしっかりと理解し、何が求められているのかを把握しましょう。
特に、特別退職金の内容や再就職支援プログラムの有無など、具体的な条件を確認することが大切です。

会社の説明をよく聞く 

次に、会社の説明をよく聞くことが重要です。
実際に企業の担当者から説明を受ける際は、その場の質問や不明点をクリアにすると良いでしょう。
具体的な募集期間や対象者の範囲、そしてどのような承諾要件があるのかを詳細に理解することが求められます。
また、説明が不明瞭な場合は遠慮せず再確認しましょう。

同僚と情報を共有する

最後に、同僚と情報を共有することが欠かせません。
同じ状況に置かれている同僚と話し合うことで、自分だけでは気づかない点を発見できることがあります。
さらに、同僚と連携することで情報の正確性も高まり、より適切な判断がしやすくなります。
情報の共有は心理的な支えにもなり、冷静に対応するための助けとなります。

まとめ

会社に労働組合がない場合、労働者側は会社のいうがままに退職に追い込まれることも少なくありません。
もちろん、希望退職の条件に納得して前向きに受け止められる場合は問題ありません。
ただ、希望退職とは名ばかりの指名解雇や、退職に応じるまで面談を執拗に繰り返すなど、退職を強要される場合もあります。
そんな時に労働組合がないと、そのまま泣く泣く退職することもあり得ます。

もし労働組合がない会社で、希望退職とは名ばかりの指名解雇や、労働者にとって不利な条件での退職を強要された場合は、労働弁護士や労働基準監督署に相談する方法もあります。
会社の内部だけでなく外部の専門家の助けを借りることで、退職を回避出来たり、より良い条件を引き出せる場合があります。

  

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