早期退職関連 行政への手続き

自己都合退職と会社都合退職の違いで公的な優遇も変わる!

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同じ「退職」であっても、通常の退職と早期希望退職や整理解雇といった会社都合退職では公的支援の面でも差が出ます。
会社都合退職で優遇されるものの代表例といえば、雇用保険(失業給付)です。
でも実はそれ以外にも国民健康保険の保険料軽減処置もあります。
また、世帯収入によっては国民年金の特例免除制度の対象となる場合もあります。

本記事では、主に早期希望退職や退職勧奨、整理解雇といった会社都合で退職をした人に対する公的支援について解説していきます。

「自己都合」か「会社都合」かは退職理由で決まる

退職の分類

一口に退職といっても、退職に至るまでの過程は人によって異なります。
職場の人間関係が原因だったり、子育てや介護による離職、会社の業績不振による整理解雇などいろいろ考えられます。
ハローワークで失業手当を申請するとき、市役所に健康保険料の減免を申請するときなど、公的機関が「この人は会社都合の退職だ」と判断する基準があります。

退職の理由は大きく五つに分類されます。

  • 労働者の判断による退職
  • 定年による退職
  • 労働契約期間満了などによる退職
  • 事業主の判断による退職
  • 業績不振、倒産などが理由の退職

 

「会社都合」になる退職、ならない退職

実際には定年退職でも60才前に早期退職したのか、契約期間満了の際に契約更新を希望したのかによって会社都合になるか自己都合になるかが変わります。
よくある退職理由ごとに、その退職が会社都合によるものか自己都合によるものかを下表にまとめました。

 退職理由扱いコード
通常の退職キャリアアップ、職場への不満、結婚や転居などによる退職自己都合40, 45
早期退職恒常的に運用されている早期退職に応募して定年前に退職自己都合24
定年退職定年を迎えたことによる退職(65歳未満)会社都合25
契約期間満了契約に際し、労働者からの契約の更新または延長の申し出があった会社都合23
なかった自己都合24
希望退職、
退職勧奨
経営方針の見直し、事業所移転などを理由に臨時に実施された希望退職や退職勧奨に応じて退職会社都合31, 32
倒産倒産、法令違反などの正当な理由ある退職会社都合21, 22
解雇業績不振などによる整理解雇、天災などを理由とした退職会社都合11, 12
重責解雇労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇自己都合50, 55

通常の退職や定年まで勤め上げた末の退職であれば迷うことはないでしょう。
混乱しがちなのが早期退職による退職の場合です
早期退職とまとめていわれがちですが、企業側が福利厚生の一環として恒常的に運用している早期退職(選択定年退職)制度と、経営方針の見直しなどで臨時に実施される早期希望退職制度では扱いが異なります

早期退職(選択定年)制度を利用した退職の場合、労働者から申告した上で企業・労働者の双方が了承した「通常の契約期間満了」とみなされ、離職理由コード24の自己都合扱いとなります。
一方、希望退職制度を利用した退職の場合、企業側からの申し出を受けて従業員が退職を希望した「正当な理由のある自己都合退職」とみなされ、離職理由コード31の会社都合扱いとなります。

早期退職と希望退職は退職金の割増や再就職支援など、企業内での優遇内容が同じまたは似ており、会社都合退職だと思って離職し、ハローワークに行ってから自己都合扱いにされたのに気づいてびっくり!ということも起きがちです。
定年前に離職することを大まかに「早期退職」とくくってしまいがちですが、福利厚生の一環の早期退職制度と臨時に実施される希望退職は退職後の扱いが大きく異なります。

もし早期退職を検討している場合は、その早期退職制度が自己都合扱いなのか会社都合扱いなのかを事前に企業側に確認することをお勧めします。

ハローワークへの退職事由変更申請について

 

会社都合退職になることのメリット

失業手当の受給期間開始が早くなる

会社都合退職の場合、自己都合退職よりも失業給付金(失業手当)を早い時期から長期間受け取れます。
自己都合退職の場合は、待期期間7日+2カ月間は失業給付金を受け取れません。
会社都合退職の場合は、待期期間の7日経過後すぐに失業手当を受け取れます。

とはいえ、実際には退職日の7日後に貰えるわけではありません。
失業手当の申請に必要な離職票が手元に届くまでに10日~14日かかるからです。
ですので離職票が届いてすぐにハローワークに申請をしに行ったとしても、受給開始までには17日~21日かかります

会社都合退職の場合の失業手当受給までの流れ(実例)

下に筆者が失業手当の申請をしたときの流れをご紹介します。
筆者は3/31に退職しました。
離職票が郵送されてきたのが4/10。
離職票が届いた当日にハローワークに求職の申し込みをしましたが、初回の失業手当が入金されたのは5/22でした。

 

所定給付日数が長くなる

自己都合退職の場合、失業手当(失業給付金)の給付日数は単純に勤続年数によって決まります。
失業時の年齢などは考慮されません。

一方、会社都合退職の場合は失業時の年齢と勤続年数によって失業手当の給付日数が変わります

自己都合退職の場合の給付日数
 1年未満1年以上10年未満10年以上20年未満20年以上
全年齢共通なし90日120日150日
会社都合退職の場合の給付日数
 1年未満1年以上
5年未満
5年以上
10年未満
10年以上
20年未満
20年以上
30歳未満90日90日120日180日
30歳以上35歳未満120日180日210日240日
35歳以上45歳未満150日240日270日
45歳以上60歳未満180日240日270日330日
60歳以上65歳未満150日180日210日240日

 

失業手当の日額や給付日数の計算はシミュレーションサイトを使うのが便利です。
 Keisan! https://keisan.casio.jp/exec/system/1426729546

国民健康保険の保険税軽減処置がある

国民健康保険は、職場や組合などの健康保険に加入していないすべての人が対象です。
ただし、75歳以上の方と、生活保護を受けている方は対象外です。
退職して職場の健康保険を外れる場合は、お住まいの市区町村での加入の手続きが必要です。

軽減処置対象者

下記離職理由コードが雇用保険受給資格者証に記載されている場合、市役所などで手続きをすれば国民健康保税の軽減処置を受けることができます。

離職理由コード離職理由
11解雇
12天災等の理由によ事業の継続が不可能になったことによる解雇
21雇止め(雇用期間3年以上の雇止め通知あり)
22雇止め(雇用期間3年未満更新明示あり)
23期間満了(雇用期間3年未満更新明示なし)
31事業主からの働きかけによる正当な理由のある自己都合退職
32事業所移転等に伴う正当な理由のある自己都合退職
33正当な理由のある自己都合退職
34正当な理由のある自己都合退職(被保険者期間12か月未満)

ご自身の離職理由コードは雇用保険受給資格者証の項目12「離職理由」にて確認できます。

雇用保険受給資格者証の離職理由コード
筆者の雇用保険受給資格証

 

軽減額

離職した前年の給与所得を100分の30として、国民健康保険税を計算します
筆者の場合は申告により、年額40.6万円 → 11万円にまで軽減されました。

国民健康保険税は自治体や年齢によって税額が異なります。
市町村ホームページに計算方法が記載されていたり、計算用のエクセルファイルが用意されている場合もありますので、役所のホームページを覗いてみましょう。
全市町村をカバーしているわけではありませんが、居住地を選んで国民健康保険料をシミュレーションしてくれるサイトもありますので、そちらを利用するのもお勧めです。

外部サイト

 

軽減対象期間

 離職日の翌日から翌年度末までの最長2年間
※期間途中で再就職し、企業の健康保険に加入するなど国民健康保険を脱退すると終了します。

必要書類

  • 雇用保険受給資格者証  ※雇用保険受給資格者証(仮)は不可
  • 身分証明書
  • マイナンバーカード

 

国民健康保険税の軽減を受けるタイミング

退職後すぐに再就職する場合

正社員で再就職が決まっている場合、社会保険(企業が運用する〇〇健康組合など)に加入することになるため、軽減処置の申請をする必要はないでしょう。
というのも、すべての法人事業所、または従業員を常時5人以上雇用している個人事業所(一部 業種を除く)は、厚生年金保険と健康保険への加入が法律で義務付けられているからです。

年金と健康保険はセットで取り扱うため、「年金は厚生年金で、健康保険は軽減が受けられる間は国民健康保険が良い」とは出来ないのです。
とはいえ、健康組合に加入すると保険料の半額は企業側が払ってくれるため、国民健康保険の軽減後の額と比べて大幅に多く払わなくてはならないということにはなりません。

むしろ最長2年間しか適用されない国民健康保険の軽減額よりも、長く企業に勤めて保険料の半額を負担するほうが遥かにお得になるはずです。

失業手当を受給する場合

会社都合退職の場合、最短で手続きできれば離職から17~21日で失業手当の受給が始まります。
失業手当の受給が始まると健康保険組合の規約と受給額にもよりますが、大抵の場合は扶養から外されて国民健康保険に加入することになります
扶養から外される目安は、社会保険の扶養の上限である年収130万円、1ヵ月あたりに直すと10万8333円日額では3,612円です

この額より多く失業手当を受け取る場合は扶養から外すというのが一般的です。
ご自分の失業手当の日額は雇用保険受給資格者証に記載があります。

もしまだ雇用保険受給資格者証をお持ちでない場合、ハローワークの計算待ちの場合はシミュレーションサイトで試算もできます。
 keisan! https://keisan.casio.jp/exec/system/1426729546 

3,612円の日額を離職前の月給に換算するとおおよそ13.5万円となります。
もし離職前の半年間の月給の平均が13.5万円以下ならば扶養のまま失業手当を受給できるでしょうが、大抵の人はオーバーするかと思います。
その場合はご家族の社会保険の扶養には入れず、国民健康保険税と国民年金を支払う必要があります。
その時に国民健康保険税の軽減を申告すれば、本来支払う額のおおよそ3分の1まで支払額が軽減されますので、かなり助かるはずです。

国民年金は特例免除を活用する

退職して厚生年金を外れた場合、国民年金の加入手続きを行って国民年金保険料を納めることになります。
すぐに就職しない場合は必ず国民年金に加入しなければなりませんが、会社都合退職による優遇はありません。
保険料の支払いが難しい場合は、免除制度を利用することで負担を軽くすることができます。

住んでいる市区町村の役所・役場の国民年金担当窓口または年金事務所の窓口でご相談ください。

特例免除制度

通常であれば審査の対象となる本人の所得を除外して審査を行い、国民年金保険料の納付が免除されます。
特例免除は、申請する年度または前年度において退職(失業)の事実がある場合に対象となります
ただし、本人・世帯主・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が審査基準となるため、ご家族に収入がある場合は免除されにくくなります

筆者の場合は夫の所得が基準額以上であったため、免除は受け付けてもらえませんでした。
詳しくはお近くの年金事務所、市町村役場の国民年金担当窓口でご相談ください。

まとめ

会社都合退職の場合に行政から受け取れる優遇についてまとめました。
雇用保険の失業給付の金額と期間が優遇されることは有名なので知っていた人も多いかと思います。
しかし実はそれ以外にも国民健康保険料の軽減や、国民年金の特例免除の対象となる場合もあります。
ただ、失業給付も国民健康保険も、退職後すぐに再就職する場合は恩恵を受けることはできません。

申請の手間暇をかける必要はありますが、失業給付を受けて生活するのは憧れますよね。
とはいえ、受給期間が長くなるほど毎月2回の転職活動実績が負担になってきます。
どこまで失業給付を受けるのか、再就職するつもりがあるのかは退職前にある程度期限を切っておくと良いと思います。


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