業績不振やリストラ、退職勧奨など、予期せぬ理由で「会社都合退職」を余儀なくされるケースが増えています。
「転職に不利にならないか?」という懸念は当然ですが、通常の会社都合退職が転職活動で不利になることは、ほとんどありません。
この記事では、会社都合退職の種類、転職時の具体的なメリット・デメリット、そして面接で前向きに伝えるための戦略を解説します。
会社都合退職とは?種類と失業保険の大きな優遇
会社都合退職とは何か?
会社都合退職とは労働者が自己の意思に基づかず、企業側の何らかの都合によって退職させられることを指します。
具体的な例
- 会社の業績悪化による整理解雇
- 経営効率化のための希望退職・退職勧奨など
会社都合退職は、失業保険の受給開始時期と給付期間において、自己都合退職より有利な条件が適用されます。
会社都合退職の最大のメリットは「経済的優位性」
| メリット | 自己都合退職との違い |
| 失業保険の優遇 | 待期期間(7日間)終了後、給付開始。 給付期間も長く(最長330日)、経済的安心感がある。 |
| 割増退職金 | 企業にもよるが、月給の6ヶ月分〜48ヶ月分相当の割増金を受け取れる場合が多い。 |
| 再就職支援 | 企業が再就職支援サービス(転職エージェントなど)の費用を負担してくれる。 |
会社都合退職のメリットは、経済的な補助や再就職支援が手厚い点です。
割増退職金に加えて失業保険の受給期間も長く、退職後すぐに再就職先が見つからない場合でも収入をサポートしてもらえる安心感があります。
また、転職市場においても企業側が理由を理解しやすく、新しい職場に対しても不当解雇ではないことを説明しやすいです。
前職が会社都合による退職であれば、スキルや経験を評価されやすい傾向にあります
転職活動での「不利」を乗り越える方法とデメリット
会社都合退職の転職でのデメリットと懸念点
一方、会社都合退職にはデメリットも存在します。
会社都合退職のデメリット
- ネガティブな印象を与える可能性がある
- 転職先が見つからないまま退職する可能性がある
- 自己肯定感の低下
希望退職・退職勧奨なら、転職には影響しない
自己都合退職と会社都合退職の大きな違いは、退職理由が個人の意思によるか、企業側の都合によるかです。
会社都合退職の方が、失業給付の受給期間が長いというメリットはありますが、大抵の人は失業給付を満額受け取る前に転職先が見つかります。
普通解雇・懲戒解雇などの理由でなければ、会社都合退職が転職活動時に不利になることはありません。
「マイナスな要因で会社から解雇された人間なのかもしれない」と疑念を抱かれないよう、あらかじめ会社都合退職の事情を説明できるようにしておきましょう。
募集期間によっては、退職日までの転職が厳しい場合もある
会社都合退職の場合、転職先が見つからないまま退職日を迎える可能性があります。
特に希望退職の場合、募集期間1か月以内という企業が全体の7割です。
そこから退職日までに業務の引継ぎをしつつ転職活動を行い、さらに転職先を確保するのは年齢が上がれば上がるほど難しくなります。
自己肯定感の低下
特に個別面談で退職を勧められた場合、「自分は要らない人間だった」とネガティブな感情を抱きがちです。
そんなことありません。
たまたま会社が人員整理をしたかった時に居合わせただけです。
希望退職や退職勧奨で退職を勧められる人は、ほとんどはこれまで普通の評価を得ていた人です。
「運が悪かったな」と諦めて、新しい職場でがんばりましょう。
面接での退職理由の伝え方:ポジティブに転換する例文
転職理由をポジティブに伝える方法としては、まず、自分のキャリアビジョンを明確に持つことが必要です。
それを基に、具体的なエピソードや事実を交えて説明することで、面接官に前向きな印象を与えます。
例えば、「前職では企業全体の業績悪化により退職せざるを得ませんでしたが、それを機に自身のスキルを磨き、○○の業界での専門性を高めたいと思うようになりました」といった具体的なキャリアの方向性を示すと効果的です。
また、自身の強みや新たな職場での貢献度についても具体的に説明しましょう。
面接での退職理由の例文
面接での退職理由を伝える際の例文を紹介します。
といった具合に、会社都合退職の事情を説明する際は、「企業側の都合であったこと」と「自身のキャリアへの意欲」を強調しましょう。
離職票の記載内容はどんなもの?
離職票とは?役割と記載される内容
離職票とは、離職したことを証明する公的な書類で、所属していた企業を介してハローワークが発行してくれます。
離職票には離職理由や離職前の賃金状況が記載されます。
- 被保険者番号、氏名住所など離職者の情報
- 事業所名など企業の情報
- 離職理由
- 被保険者期間算定対象期間
- 被保険者期間算定対象期間における賃金支払基礎日数
- 賃金支払対象期間
- 賃金支払対象期間における基礎日数
- 賃金額
③の離職理由は倒産や定年、労働契約期間満了、労働者の判断など6種類19パターンあり、該当する離職理由にチェックがつけられます。
更に退職理由欄下部に「具体的事情記載欄」があります。
会社都合での退職の場合、ここに「退職勧奨による退職」「希望退職による退職」などと記載されます。

転職先に離職票を提出する必要はある?
離職票は次の職が決まっていない状態で離職し、失業手当(失業保険)を受け取るときに必要となります。
離職票を使う場面は基本的にハローワークで雇用保険の受給資格を得る時です。
退職後の転職先がすでに決まっている場合は、失業手当を受け取ることはできませんので離職票も不要となります。
場合によっては、転職先から離職票の提出を求められる場合があります。
基本的には転職先に離職票を提出する必要はありません。
もし雇用保険の手続きの関係で離職票の提出を求められた場合は、雇用保険被保険者番号を伝えるだけでも問題ありません。
【要警戒】普通解雇・懲戒解雇の転職への影響
普通解雇・懲戒解雇とはどんなもの?
「解雇」の中でも、普通解雇や懲戒解雇は転職活動に大きな影響を及ぼします。
| 解雇の種類 | 定義 | 雇用保険上の分類 |
| 普通解雇 | 勤務成績・能力不足などにより行われる解雇。 | 会社都合退職 |
| 懲戒解雇 | 重大な規則違反・法令違反による制裁的解雇。 | 重責解雇 (自己都合扱い) |
普通解雇・懲戒解雇は会社都合退職になるのか?
雇用保険におけるルールでは、解雇により離職した者は基本的に会社都合退職の扱いになります。
ただし、解雇の中でも労働者の責めに帰すべき重大な理由による「重責解雇」処分を受けた場合は、自己都合退職として扱われます。
重責解雇になる事由には下記のようなものがあります。
重責解雇になるもの
- 刑法の規定違反
- 故意または重過失による設備や器具の破壊
- 故意または重過失による事業所の信頼失墜
- 重大な就業規則違反 など
重責解雇の場合は、失業手当受給時に待期期間終了後、更に3か月間の給付制限があります。
履歴書の賞罰欄に記入するべきか?
履歴書の賞罰欄に解雇の事実を記入するか否かは、解雇の種類や背景によります。
- 懲戒解雇
賞罰欄に記載しないと経歴詐称となる - 普通解雇の場合
賞罰欄への記載は特に必要なし
基本的には、正直に伝えた方が良いです。
全部が全部、理由を説明する必要はありませんが、当たり障りのない範囲で解雇になった理由は伝えましょう。
普通解雇・懲戒解雇を隠したまま入社するとどうなるか?
普通解雇や懲戒解雇の事実を隠して入社し、入社後に前職の解雇理由が判明した場合は新しい職場での信頼を大きく損なうことになります。
隠していたことが理由で経歴詐称として再び解雇される可能性もあります。
信頼は一度失うと回復が難しいため、最初から正直に解雇理由を伝えることが肝要です。
その上で、前経験をどのように改善・発展させたかを具体的に説明していきましょう。
まとめ:会社都合を「転職のチャンス」に変える
普通に業務をこなしてきた上での希望退職や退職勧奨は、転職活動で不利になることはありません。
自己都合退職に比べて、在職時に転職活動に使える時間が少なく、転職先が決まらないまま退職日を迎えることもあるでしょう。
会社都合退職の強みである「失業給付の給付期間の長さ」をうまく活用し、焦らず慎重に、より良いキャリアを見つけるチャンスとして前向きに転職活動を進めていきましょう。
また、不利な解雇理由がある場合は、正直な姿勢と自己改善の意欲を伝えることが、新しい職場での信頼を築くための第一歩となります。
転職活動においては、常に前向きな姿勢と自己改善の意欲を持ち続けることが重要です。
あなたの転職がうまくいくよう願っております。
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