希望退職が公示された時、早期定年退職制度のパッケージ説明があった時、応募するべきかこのまま会社に残るべきか、悩みますよね。
特に家族がいる場合や定年に近い場合は、今後の生活のこともあるので悩みも大きいと思います。
早期退職を決断する際には、さまざまな理由があり、実例を通じてその背景を知ることは今後のキャリア選択の参考になるでしょう。
これからのキャリアを検討している方にとって、他者の実体験は非常に価値があるものです。
本記事では、筆者の周りにいた早期退職者の事例を紹介し、その根底にある思いや動機について探求していきます。
早期退職した4人の決断理由とその後
会社とのミスマッチで希望退職 Tさん
Tさんは筆者が入社したころにいた課長さんでした。
Tさんは中途採用で、前職はアメリカの国家機関という、思わず耳を疑うスーパーな人でした。
そんなTさんが日本に戻ってきて、わざわざ当時某電機メーカーの子会社に転職してきた理由は単純明快。
「実家の近くに会社があったから」
しかしそんな優秀なTさんを地方工場の間接部門に配置するのは惜しいと思った会社は、Tさんを東京本社の配属にしてしまいました。
当時のTさんは40代後半、仕方なしに東京本社で働いていました。
そしてリーマンショック後に希望退職が公示されたタイミングで、Tさんは早々に退職を表明。
会社側は引き止めましたが、地元に戻りたかったTさんの決意は固く、そのまま退職していきました。
その後のTさんは実家を継いで農業を営んでいます。
真っ黒に日焼けしてニコニコ笑顔の写真が何度か送られてきて、幸せそうな姿に社員一同ほっこりしました。
本社配属でなければ定年まで勤めてもらえたかもしれないのに、会社はもったいないことをしたなと思います。
計画的な早期定年退職 Kさん
Kさんは筆者が入社したころは開発部の課長さんでした。
新技術開発をメインで行い、いくつかの商品化を経て最終的に開発部の部長になりました。
普段からキッチリとしていて厳しい人でしたが、私生活では奥さんと二人、子供なしの仲良し夫婦でした。
そんなKさんは55歳になった早々に早期定年退職で退職しました。
子どもがいなかったので老後資金に余裕があったこと、早めに引退してスローライフを楽しみたいことが理由です。
退職後はハローワークの職業訓練で造園業や植栽の講座を受講して、教育訓練給付金を受給しながら基本手当を受給して、キッチリともらえるものは全部もらったそうです。
ちなみに造園や植栽の講座を選んだ理由は、「自宅の庭の手入れに役立つから」。
職業訓練受講中は、失業手当をもらうために必要な求職活動実績が無くても失業保険の基本手当の支給対象となります。
そこまで調べつくしたKさんの凄さに、社員一同脱帽しました。
失業保険ももらいつくした後は、特に働くこともなく、移住先の新居の庭の手入れをしたり、たまに会社時代の釣り仲間と釣りをしたりして楽しく暮らしているようです。
まさに理想のスローライフですよね。
お茶目に仕返し Fさん
Fさんはもうあと2~3年で定年退職というベテラン技術者でした。
筆者とは部署が違いましたが、人当たりの良いユーモアのあるおじさんです。
そんなFさんは、コロナ禍の時に50代以上の管理職を対象とした希望退職の対象になりました。
希望退職といいつつも、対象となる人には面談が設定されて退職を促される実質的には退職勧奨です。
Fさんは面談後、「辞めてほしいのは分かるけど、やり方が卑怯だよな!」とちょっとプリプリしていました。
その後、家族とも話し合って、かなり早い段階で退職に応じる気持ちになったFさん。
でもそのまま退職に応じるのはなんか癪に障った(本人談)ので、退職する意思があることは隠してそのまま何度も面談を重ね、常にのらりくらりとやり過ごします。
募集期間の2か月ほどを「この人辞めるの?!辞めないの?!どっちなの?!」と人事をヤキモキさせて、応募最終日にあっさりと応募書類を提出して退職を表明。
「本当は早い段階で退職する気だった」とカミングアウトして、人事に「あの面談に使った時間はなんだったの?!」と悔しがらせることに成功して、高笑いして辞めていきました。
恐れるものは何もないFさんに、人事アレルギーな社員みんなで大笑いでした。
退職メールで評価ガタ落ち Sさん
Sさんは筆者が入社時から開発部にいたベテラン技術者です。
50歳を過ぎたあたりから開発業務からは退いて、開発部の人材開発や在庫管理などのバックオフィス業務をするようになりました。
そんなSさんも、コロナ禍の時の50歳以上の管理職を対象とした希望退職の対象になりました。
Sさんは真面目な人ですが、バックオフィス系の業務は人余り状態だったため、面談ではかなり強く退職の圧力をかけられたそうです。
50代前半ということ、お子さんがまだ小学生ということで、Sさんも強く抵抗しましたが、最終的には退職に応じることになりました。
そして最終出社日、Sさんは退職の挨拶回りでも「本当は辞めたくない」「人事に無理矢理辞めさせられる」と毒を吐き続け、さらに退職のあいさつメールでも「本当は辞めたくなかったけど、辞めさせられました」と書いて全社員に送信して辞めていきました。
人事や上長から注意されたという話は聞きませんでしたが、不満をぶちまけ過ぎな内容に、受け取った社員一同ドキドキしました。
立つ鳥跡を濁しまくりなSさん。退職メールでかなり評判を落としてしまいました。
早期退職を考える際のステップ
意思決定のための明確な基準を作る
早期退職を決断するにあたっては、明確な基準を設けることが重要です。
この基準には、自分が何を大切にしたいのか、どのような人生を送りたいのかといった価値観の確認が含まれます。
また、経済的側面からは、退職後の生活費や資産運用の計画、現在の職場の業績見通しなどを基に、定量的な判断基準を設定することが勧められます。
これにより、具体的で実現可能なプランを描きやすくなり、早期退職をより自分らしい選択とすることができるでしょう。
早期退職決断時に必要な情報
- 退職金の詳細な条件
- 再就職支援制度の内容
- ミドル世代の転職市場の動向、転職難易度
- 現在の資産状況
- 退職後の生活費の試算
- 公的支援の内容
- 世界経済の動向
教育費や生活費を考える
早期退職を考える際には、教育費や生活費をきちんと計画することが重要です。
特に子供の教育にかかる費用は家計に大きな影響を与えるため、綿密な計画が求められます。
大学など高等教育に進む子供がいる場合、その費用は大きくなりがちです。
また、生活費については、退職後の収入がどの程度になるのかを考慮に入れ、現役時代と同じ生活水準を維持できるか、あるいはその水準を調整する必要があるかをしっかりと検討する必要があります。
資産運用と退職後の収入計画
資産運用と退職後の収入計画は、早期退職を考える上で非常に重要です。
退職金が増額されることが多い早期優遇退職制度を活用する場合でも、その後の長期的な収入源を確保することで安心感が生まれます。
資産運用については、リスクを抑えつつ安定した利回りを得られる方法を選ぶことが最善とされます。
例えば、低リスクの国債や社債、あるいは安定成長株など、多様な資産に分散投資することが考えられます。
また、再就職や副業、フリーランスなど多様な働き方を視野に入れることで、収入面のリスクを軽減する方法も検討に価します。
早期退職を選択する際は、これらの経済的側面を踏まえ、安心して第二の人生を歩むための収入計画を立てることが大切です。
心理的な側面と対応法
不安や葛藤にどう向き合うか
早期退職という大きな決断を迎える際、多くの人は不安や葛藤に直面します。
この不安は主に経済的な不確実性や、再就職が難航する可能性からくるものです。
また、これまでの職場で築いてきた人間関係を失うことへの心配もあります。
そのため、この心理的なプレッシャーにどう対処するかが重要です。
一つの方法は、現実的な情報収集を行い、合理的な判断材料を増やすことです。
特に、数字として具体的に捉えることができる情報が多いほど不安感は払拭されます。
例えば、退職金の詳細な条件や、再就職支援の制度について理解を深めることで、漠然とした不安を具体的な計画に置き換えることができます。
さらに、家族や友人に相談して感情を共有することも心の支えとなるでしょう。
また、転職市場の現状についても確認し、50代での再就職の難易度を理解することで、より現実的な将来設計を行うことが可能になります。
自分らしさを見つける
早期退職は自分自身の価値観や生き方を再評価する絶好の機会と捉えることができます。
これまでの職業人生では、会社の価値観やビジョンに従って行動してきたかもしれませんが、退職後は自分独自の価値観に基づいて次のステップを考えることができます。
これまでの経験を棚卸しし、自分の得意分野や興味を掘り下げることが大切です。
例えば、自らの専門性を活かし新しい分野にチャレンジすることで、新たなキャリアを築くことができます。
また、自分のペースで生活を組み立てることにより、ストレスの軽減や生活の満足度向上に繋がるかもしれません。
笑顔で退職が理想
どんな理由で退職するとしても、退職するときには笑顔で感謝の気持ちを述べて辞めていくようにした方が良いです。
最初の事例に出てきたSさんのように、毒を吐くだけ吐いて辞めていくのは本人も周りも不幸になります。
今時は退職者が数年後に出戻りできるアルムナイ採用も増えてきています。
最後の印象が悪いと、もしアルムナイ採用があったとしても選考にすら入れてもらえなくなります。
また、他社に再就職後に、前職に問い合わせをする際などにも気まずい思いをすることになります。
早期退職をすると決めたなら、そこからは次のステップに向けて気持ちをリセットしましょう。
辞める会社のことをいつまでもグチグチと不満を垂らしても生産性ゼロです。
悔しさをバネに見返してやる!くらいの気持ちで新しい道に進みましょう。
同業他社の求人情報もチェックしてみよう
希望退職などの人員削減が行われると、本当は辞めたくないのに退職を迫られることもあります。
希望退職や早期退職を持ちかけられるのは大抵40代や50代、一番お金が必要な世代です。
割増退職金で多くのお金をもらえるとしても、できれば次の会社でも現職と同等か多い給料が欲しいものですよね。
希望退職が実施されたら、まずは同業他社の求人情報をチェックしてみましょう。
意外と同じような業務内容で年収アップしそうな求人が出てきますよ。
今時の転職活動は、転職サイトや転職エージェントの活用が必須です。
転職サイト・転職エージェントは登録無料です。
まずは、気軽に情報収集から始めてみましょう。