会社を退職すると、従業員持株会(持株会)も自動的に退会することになります。
保有していた株式はどうなるのか、インサイダー取引のリスクや税金はどう処理すればよいのか、疑問がたくさん浮かんできますよね。
退職時には、この持株会からも退会する必要があり、所有している株式は単元株に書き換えられるか、時価で売却されることになります。
この記事では、退職後に必要な持株売却の手続きや、知らないと損するペナルティ、さらには税務上の注意点まで、実体験を交えてわかりやすく解説します。
持株会とは?
持株会の基本概要
持株会とは、従業員が毎月一定額を拠出して自社の株を購入できる制度で、資産形成を支援する福利厚生の一環です。
通常、給与から自動的に天引きされ、会社がまとめて株式を購入します。
購入された株式は、持株会の名義で管理され、従業員はその一部を所有することになります。
持株会に参加することで、従業員は会社の成長に対するインセンティブを持ちつつ、自身の資産形成にも寄与できます。
持株会のメリットとデメリット
持株会にはメリットとデメリットがありますが、適切に活用することで従業員の資産形成に大いに役立つ制度であることは間違いありません。
メリット
- 従業員が手軽に資産を形成できる
- 奨励金が支給される場合が多い
- 長期的な資産運用が可能
- 会社の業績が良好な場合、株価の上昇によってさらなる利益が期待できる
デメリット
- 会社の業績によっては資産価値が減少する
- 売却時には会社の承認が必要
- 退職時には持株会を退会する必要がある
退職したらどうなる?持株会退会と株の処理
退会の手続き
退職時には、持株会への連絡・退会手続きが必要になります。
退会する際には、持株会を通じて保有していた株式を個人の証券口座に振替する手続きを進めます。

もし個人で証券口座を持っていない場合は、まずは証券口座の開設が必要です。
- 単元株(100株)以上はそのまま振替可能
- 単元未満(端株)は【時価で売却】か【追加入金して単元株化】を選択するのが一般的
- 証券口座がない場合は、開設が必要(事前準備がおすすめ)
筆者は途中で売却もしていたため、退職時点では176株ちょっとの自社株をもっていました。
そのうち100株は証券口座の特定口座に振り替え、残りの76株分は現金でネット銀行に振り込んでもらいました。

退会時や振替完了時には証券会社からハガキで案内が来ます。
大抵の場合、退会~振替手続きの完了までは2週間~1か月はかかります。
非上場企業の持株はどうなる?
非上場企業の場合は、持株を個人名義に変更できないケースが多く、持株会に買い取ってもらう流れになります。
手続きは企業や持株会の規定によって詳細が異なるため、事前の確認が重要です。
売却に必要な「簿価」とは?
簿価単価
株を売却する時、確定申告をするときに必要となるのが「簿価」です。
簿価は1株当たりの取得単価のことです。
これは半年に1回、持株会から会員宛てに「投資計算明細書」や「投資等報告書」などの名前で通知が来ます。
その通知書の中に、拠出金額、取得株式数、簿価単価などが記載されています。
もしこれまでの明細書を捨てていたとしても、持株会から脱退した後、清算を行った際に簿価単価が記載された通知書が届きます。
筆者の場合は3月末に退職して4月末に清算通知書がきました。
簿価の記載がない・書類を捨ててしまった場合は?
証券会社や通知書の種類によっては、簿価の記載がない場合があります。
簿価がない場合や、書類を捨ててしまって手元にない場合は「拠出金額 ÷ 株数」で自分で計算することも可能です。
株価変動と売却タイミング
株価の変動は、持株売却のタイミングに大きな影響を与えます。
持株会に入っている間は、インサイダー取引に該当する可能性があるため、会社の指定時期に会社に売却申請書などを提出した上で株を売却する必要があります。
そのため株価が大きく上がったときや、住宅や車などの購入時に合わせて売却することが多いでしょう。
一方、退職後の株式売買については退職後1年間のインサイダー取引の対象期間を過ぎてしまえば、好きな時に売買できるようになります。
退職後は売却タイミングとインサイダーリスクに注意!
インサイダー取引のリスク
退職後の持株売却には、インサイダー取引のリスクが伴います。
インサイダー取引とは、公に知られていない内部情報を利用して株式を売買する行為であり、法律で厳しく規制されています。
退職後でも過去の業務を通じて知り得た未公開の会社情報をもとに取引を行うことは、依然としてインサイダー取引と見なされる可能性があります。
目安としては退職後1年は関係者としてインサイダーの対象となります。
インサイダーが成立する4要件
- 会社関係者:上場会社の役員や従業員
- 上場会社の株価に大きな影響を与える「重要事実」を知っている
- 「重要事実」が公表前である
- その状態で株の売買をした
公表前の重要事実(業績の大幅な修正や企業合併、株式の分割など)を知らなければ対象外といえます。
筆者のように開発部門に所属していた、経営戦略や予算・財務管理などの業務を担当していたような人の場合は、大事を取って1年は売却をしないほうが無難です。
それ以外の場合でも不安がある場合は、持株会から振替が完了してもすぐに売却はしないでおきましょう。
税務面での注意点
持株を売却する際には、税務面での注意が必要です。
売却益には「譲渡所得税」がかかります。
証券口座で源泉徴収される特定口座を使えば手間は少ないですが、売却内容によっては確定申告が必要になる場合もあります。
良く分からない場合は、株の勉強をするか、専門家などの詳しい人に相談しましょう。
【体験談】株価の急落と、実際に感じた焦り
筆者が退職した2024年は上半期までなら、日経平均は連日最高値を更新し、半導体銘柄を中心に株価は右肩上がりでした。
しかし、2024年8月には、円高への転換や米国半導体関連企業の株価低迷が重なり、日経平均は42,000円台から34,000円台まで、わずか1か月足らずで急落しました。

筆者の元居た会社は半導体関連株なので、思いっきり影響を受けて資産が大きく目減りしています…。
退職したばかりで、まだインサイダー期間中のため売却できないという状況もあり、ただただ株価の下落を眺めるだけの日々。
あと半年、何もせず気絶していようと思っています(涙)。
まとめ
持株会は、従業員の資産形成を支援するための福利厚生制度ですが、退職後にはその運用に特別な手続きを行う必要があります。
持株会からの脱退から、個人の証券口座に株式が振り替えられるまでには半月~1か月はかかります。
もし個人の証券口座を持っていない場合は、さらに時間がかかる可能性もあるため、退職が決まった時点で証券口座の開設についても検討しておきましょう。
持株売却における株価変動と売却タイミングの見極めはもちろんのこと、インサイダー取引のリスクや税務面での注意点も重要です。
特に、インサイダー取引のリスクは法律に触れる重大な問題であり、退職後1年間は株の売買は控えた方が無難です。