希望退職の募集があったとき、応募するまでには色んな葛藤があります。
転職が上手くいくかも心配ですし、同僚たちの動きも気になります。
結局応募はしないで「次の募集の時に動けるように、スキルを磨いておく」というのも立派な選択の一つです。
でも希望退職がまたあるのかは、その時の世界情勢や会社の経営状況にもよるので誰にもわかりません。
もし二回目の募集があったとしても、一回目よりも条件が悪くなっている可能性があります。
この記事では、希望退職が複数回あったときの募集条件や退職金の割増額などがどのように変化するのかを、実際に複数回募集した企業の実例とともに解説していきます。
希望退職の募集回数とその影響
前向きな希望退職と、後ろ向きな希望退職
希望退職は、新しい事柄にチャレンジしたい人や、そもそも転職を考えていた人にとっては嬉しい制度です。
割増退職金を貰って大手を振って辞めれる上に、残留したかった人から感謝されることもあります。
でもそれはあくまでも経営状態が安定している、いわゆる黒字経営で行われる希望退職の場合です。
赤字経営の時に行われる希望退職は、希望退職とは名ばかりの指名解雇となることも珍しくはありません。
それでも募集人数に満たない場合は追加で2回目・3回目の募集が行われることもあります。
希望退職の複数回募集が与える影響
希望退職の募集回数や募集人数が多い場合、従業員の間には先行きに対する不安と、経営陣に対する不信感が生まれます。
特に1~2年といった短い期間の間に複数回の希望退職が実施される場合、社内の雰囲気は暗くなり、仕事に対するモチベーションも下がります。
周りの同僚がどんどん辞めていくので、業務量もストレスも増えます。
希望退職の場合は対象となる社員が40代以上のベテラン層になるため、単純な業務量だけでなく、責任ある重要な仕事も増えがちです。
給料は変わらないのに業務の量と質が変わってしまったら、会社に対する不満がたまるのも仕方ありません。
「このまま泥船に乗っているよりは、割増退職金が貰えるうちに転職しよう」と考える人が出るのも当然のことです。
筆者がいた会社でも10年間に希望退職を3回、合間合間に退職勧奨もしていたので雰囲気最悪でした。
みんな疲れた感じが出ているし、上司は忙しそうなので、若手の間には「出世したら大変そうだからほどほどで良いや」という気持ちが蔓延。
身軽な若手からどんどん辞めていく負のループ!
あんまり頻回な募集は良くないですよね
一回目の募集で手をあげるのが一番お得
一回目の募集で応募するメリットの一つとして、初回の募集は退職金やその他の条件が比較的良いことが多い点が挙げられます。
初回の募集は会社側の意図としても、できるだけ多くの希望退職者を募りたいという考えがあるため、インセンティブが高く設定されることが多いです。
しかし、一方で大きな決断を短期間で行わなければならないというデメリットも存在します。
特に、家族と十分に相談する時間がない場合、後悔する決断となるリスクが高まります。
二回目以降の募集で応募するメリットとデメリット
二回目以降の募集で応募するメリットとして、初回よりも幾分落ち着いて状況を見極める時間が得られる点があります。
一回目の募集での状況や他の従業員の動向を見ながら慎重に判断できるため、より計画的な決断が可能です。
デメリットとしては、退職金の割増額が減ったり、対象となる職種や年齢範囲が広がる点などが挙げられます。
さらに、募集が続くことで社内の雰囲気が悪化し、心理的なプレッシャーが増すことも考えられます。
そもそも2回目の募集があるのか、あったとしていつになるのかは、その時の経済状況にもよるので誰にもわかりません。
少しでも辞めたい気持ちがあるなら、後回しにせずに今ある希望退職の募集について真剣に検討するべきです。
実例から見る退職金割増額と募集条件の変化
退職金の割増額は、企業が公表した「早期希望退職に伴う特別損失の額 ÷ 退職者数」で概算しています。
実際には下記2項目によるブレ幅があることをご理解ください。
・年齢や在籍年数による割増金の増減
・再就職支援会社への委託金、有給休暇の買い取りなど、割増金以外の費用も含んでいる可能性
大正薬品
製薬大手の大正薬品は2018年と2023年に希望退職を実施しています。
2018年の募集では、勤続10年以上かつ40歳以上の社員が対象だったこともあり、一人当たりの退職金割増額は1286.9万円と高額です。
一方、2023年の募集では、勤続年数3年以上かつ満30歳以上の社員へと対象範囲が拡大しています。
若手社員が応募したこともあってか、1回目に比べると割増金額は約350万円ほどダウンしています。
大正薬品の2023年の決算は、▽売上高1630億9700万円(前年同期比12.9%増)▽営業利益163億6000万円(34.0%増)▽経常利益190億7900万円(10.0%増)▽純利益74億5000万円(31.5%減)と、純利益こそ早期退職関連費用で激減したものの、売り上げ自体は悪くありません。
それでも希望退職を募集したのは、今後の国内市場が少子高齢化の影響で縮小が見込まれること、業績が好調なうちに余剰人員を減らして組織をスリム化することが目的です。
ジャパンディスプレイ
ジャパンディスプレイは、日立製作所、ソニー、東芝のディスプレイ事業を統合して誕生したパネルメーカーです。
2018年と2019年に立て続けに希望退職を実施しています。
2018年の募集では50歳以上の社員が対象で、一人当たりの退職金割増額は862.1万円でした。
翌2019年の募集では40歳以上の社員へと対象範囲が拡大され、割増額は約230万円ダウンの639.8万円になりました。
ジャパンディスプレイの主力はスマホ向け液晶パネル事業です。
しかし、海外メーカーの台頭に伴う価格競争の激化、有機ELの採用拡大、スマホのライフサイクルの長期化などにより、苦境に立たされています。
2023年の決算では、▽売上高2392億円(前年度比12%減)▽営業利益341億円の赤字(同102億円増)▽純利益443億円の赤字(同185億円減)で10年連続赤字です。
不採算のスマートフォン向けや車載向けの液晶ディスプレーから撤退を進めているとのことなので、今後また希望退職などのリストラ策が発表される可能性はあります。
三陽商会
アパレルメーカーで、海外ブランド販売も手掛ける三陽商会は、2013年~2021年にかけて4回の希望退職を実施しています。
どの回も年齢や勤続年数による縛りはありません。
順を追ってみてみると、2013年の第一回募集以降は右肩下がりに割増額は減少し、第一回と第四回では割増額に400万円以上の差があります。
バーバリーとのライセンスが切れた2015年以降、赤字が続いていたところにコロナ禍で大打撃を受けた三陽商会ですが、2022年2月期決算から三期連続黒字になっています。
背景には円安による海外からの観光客によるインバウンド消費が大きいです。
百貨店に依存した販売網から脱却し、EC販売に注力するなど、デジタル化を進めていくことができれば、もう少し経営が安定するのではないかと思います。
応募のタイミングを決めるための判断基準
会社の財務状況を確認する
希望退職制度への応募のタイミングを考える際、まずは会社の財務状況を確認することが重要です。
財務位置が悪化している企業では、初回の募集時に退職金の上乗せが大きいケースが多いです。
逆に、すでに数回の募集が行われている場合、上乗せ額が減ることが考えられます。
余裕があれば、自分の会社以外の業界全体の動向や、世界経済の動向など、経済状況にも常にアンテナを張っておくようにしましょう。
自身のキャリアプランを考える
早期退職や希望退職制度に応募する際は、自分のキャリアプランをしっかりと考えることが大切です。
将来的なキャリアの方向性、自分が培ってきたスキルや経験を活かせる就職先やフリーランスとしての独立など、具体的なビジョンを持つことが必要です。
希望退職制度を利用することで退職金の増額や再就職支援などのメリットを得られる反面、計画無しに手続きを進めると転職先が見つからなかったり、経済的に不安を感じる可能性があります。
常日頃から転職サイトなどをチェックして気になる職種の調査や、自身のスキルや経歴の再確認を行いましょう。
他の従業員の動向をチェックする
他の従業員がどのタイミングで希望退職に応募しているかをチェックすることも重要です。
初回の募集で多数の従業員が応募すると、その後の募集で条件が変わる可能性があります。
また、退職を考える際には周囲の動向を見ながら自分が後回しにされた場合のリスクも考慮しましょう。
希望退職の応募における心理的な側面
不安感とその対処法
希望退職制度の応募を考える際、多くの人が感じる最大の障害は「不安感」です。
この不安感は、今後の生活設計やキャリアプランに対する漠然とした懸念から生じます。
特に、希望退職が公示されてから募集が締め切られるまでの期間は、自分がその対象となることで未来への不安が増幅されることがあります。
不安感を軽減するための方法として、まずは具体的な情報収集を行うことが重要です。
会社の財務状況や今後の事業計画、退職金の詳細などを確認しましょう。
例えば、退職金がどの程度支給されるのか、再就職の支援制度があるのかなどを把握することで、不安感を具体的な問題として捉えやすくなります。
また、自身のキャリアプランを再評価し、希望退職後の生活設計を具体的に考えてみることも重要です。
どのような仕事をするのか、フリーランスとして独立するのか、さらには資産運用の方法などを具体的に考えることで、不安感が軽減されます。
定期的にキャリアカウンセリングを受けることも、効果的な方法です。
周囲のプレッシャーにどう対処するか
希望退職の応募に際しては、周囲からのプレッシャーも大きな課題となります。
特に、直属の上司や同僚からの圧力を感じることがあるでしょう。
これに対して適切に対処するためには、まずは自身の意思をしっかりと持つことが重要です。
自分にとって最適なキャリアパスを考え、そのために必要な情報やサポートを求める姿勢を持ちましょう。
また、家族や信頼できる友人と相談することも有効です。
家族とともに考えることで、より冷静に物事を判断することができます。
家族の意見を聞くことで、自分一人では見落としがちな視点やリスクについても気付くことができます。
最後に、外部の専門家に相談することも一つの方法として考えられます。
キャリアカウンセラーやファイナンシャルプランナーに相談することで、客観的なアドバイスを得ることができます。
労働組合や人事部の担当者がいる場合は、彼らのサポートを活用するのも一つの手です。
これらの対策を通じて、周囲のプレッシャーに押し流されることなく、自身の最適な道を見つけることができるでしょう。
まとめ
希望退職に応募する際は、会社の財務状況、自身のキャリアプラン、他の従業員の動向などの情報を整理しましょう。
実例で見てみると、一回目の早期退職者募集で応募するのが一番条件が良いケースが多いです。
募集回数が増えるにつれて条件が変わる可能性もありますので、情報収集が重要です。
希望退職後のキャリアや生活設計についても、再就職の準備や資産運用などの計画を日ごろから立てておくことが大切です。
自身の将来を見据えてしっかりとした計画を立てることで、希望退職を有効に活用し、より良いキャリアパスを築いていくことができるでしょう。
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希望退職などの人員削減が行われると、本当は辞めたくないのに退職を迫られることもあります。
希望退職や早期退職を持ちかけられるのは大抵40代や50代、一番お金が必要な世代です。
割増退職金で多くのお金をもらえるとしても、できれば次の会社でも現職と同等か多い給料が欲しいものですよね。
希望退職が実施されたら、まずは同業他社の求人情報をチェックしてみましょう。
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まずは、気軽に情報収集から始めてみましょう。