早期退職関連

希望退職・早期退職:リストラを実施した企業、その後の業績はどうなる?

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早期希望退職を実施する企業のニュースは年々増えている気がします。
希望退職の実施は、企業の経営戦略上のリストラの一環として行われます。
でも希望退職を実施した企業はその後どうなったか?経営改善されたのか?という視点のニュースはあまり出てきません。
そもそもリストラの対象となった方以外で、よその企業のリストラ後の経営を気にする人はあまりいないでしょう。
しかし、リストラの対象となった側からすると、リストラ後の業績がどうなるかは、そのまま会社に残るかどうかを決める重要なファクターです。

この記事では、企業がリストラを実施する背景と、リストラ実施後の業績変動についてをまとめています。

希望退職と企業の経営戦略

希望退職の定義と背景

希望退職とは、企業が特定の従業員に対して自発的に退職を促す制度です。
多くの場合、退職金の増額や再就職支援などのインセンティブを提供することで従業員の退職を促します。

希望退職を実施する背景には、企業が経営環境の変化や業績の悪化に対応するための戦略的な意思決定があります。
特にリストラや構造改革の一環として実施され、企業の財務状況を改善し、競争力を強化することを目的としています。

人口減少が進む日本においては、多くの企業が国内市場への投資を控え、人員構成の見直しを進めています。
また、経営リスクの回避や業界全体の構造改革を背景に、黒字経営にも関わらず希望退職を実施する企業も増加しています。
2023年には上場企業で希望退職を募集した企業が41社にのぼり、2024年上半期にはその数が36社と、前年を上回るペースで増加傾向にあります。

企業が希望退職を実施する動機

企業が希望退職を実施する動機は多岐にわたります。

  • 人件費の削減
  • 財務状況の改善
  • 組織の再編、事業の統廃合

人件費は企業の経費の中で大きな割合を占めるため、割増退職金を出してでも辞めてもらった方が将来的なコスト削減になります。
結果として、企業は新たな成長分野に資源を集中させることができ、競争力のある体制を整えることができます。

他の経営戦略との比較

希望退職は経営戦略の一環として実施されることが多いですが、他の経営戦略と比較することでその効果をより明確に理解できます。
例えば、M&A(企業買収・合併)は迅速に事業拡大を行う経営戦略の一つです。
しかし、M&Aは高額なコストがかかる上、統合の成否により企業の成功が左右されるリスクがあります。
これに対し、希望退職は比較的低コストかつ迅速に人員調整が可能であり、経営の柔軟性を高める点で有利です。


とはいえ、長期的な視点で見ると、希望退職だけでは持続的な競争優位性を確保するのは難しい場合があります。
例えば、リストラによる一時的なコスト削減は実現できても、いかにしてその後の成長戦略を遂行するかが課題となります。
この点で、企業は希望退職と他の経営戦略(新規事業への投資や技術革新など)を組み合わせることで、より一層の効果を狙うことが求められます。

希望退職の影響分析

企業業績への影響

希望退職を実施することで企業の業績に多様な影響を与える可能性があります。
まず、コスト削減効果が期待されるため、短期的には経営の健全化が図られ、財務状態の改善が見込まれます。

しかし、優秀な人材が退職してしまうリスクも当然ながら存在します。
その結果、業務効率の低下やイノベーションの停滞が生じる恐れがあります。

また、残された従業員の士気低下や職場環境の悪化も問題となる場合があります。

株価への影響

希望退職の実施は、株価にも大きな影響を与える場合があります。
一般的にコスト削減策が好感され、短期的には株価上昇が見込まれます。
しかし、株式市場は長期的な視点で企業の将来性を評価するため、長い目で見た場合、業績の低下や人材流出による企業競争力の低下が懸念され、株価下落の要因となることもあります。

また、M&A(企業の合併・買収)などの経営戦略と同様に、希望退職の発表直後には投資家の反応が敏感に反映されます。
特に経営再建中の企業においては、希望退職とその他施策のバランスが重要となります。

希望退職を成功させた企業は、退職後の適切な再配置や新たな戦略を掲げて投資家の信頼を獲得しています。
逆に失敗した企業は短期的なコスト削減に終始し、将来的なビジョンを示さないことが多いです。

このように、希望退職の影響は一時的な措置に留まらず、長期的な視点での経営戦略が求められます。

黒字リストラと赤字リストラ

2024年は黒字リストラが9割

2024年7月4日発表の東京商工リサーチ「上半期(1‐6月)上場企業の「早期退職」5,364人で年間1万人ペース、黒字企業が約6割」を見てみましょう。
この調査によると、2024年上半期に早期・希望退職を募集した企業のうち、黒字リストラが21社(構成比58.3%)、赤字リストラが15社(同41.6%)でした。  
さらに、黒字企業の募集人数は5,126人で募集人数の9割以上(同95.5%)を占めたそうです。

 

黒字リストラとは?

黒字リストラは、経営状態が安定していて企業の体力があるうちに実施されます。
その目的は、将来の環境変化に備えて事業構造を改革するために、先手を打ってリストラを実施するものです。

例えば、テクノロジーの進化やデジタル化が進むことで、既存の業務プロセスに対する需要が急激に減少することがあります。
このような状況では、企業は今後の成長を見据えて、効率的かつ効果的な運営体制を構築するために、前もって人員整理を行うことが求められます。

また、グローバルな競争環境の中で競争力を維持・向上するために、コスト削減や業務の効率化を図る必要があります。
そのため、黒字リストラを行うことで、将来のリスクを軽減し、持続可能な成長を目指す企業が増えているのです。

赤字リストラとは?

赤字リストラは、企業が経営赤字に陥った際に経済効率を改善するために行われる人員削減です。
企業が赤字状態にあると、資金流出が続き財務状況が悪化し、最終的には事業の継続が不可能になる恐れがあります。
したがって、赤字リストラは企業が経営を立て直すための施策の一つとして行われることが一般的です。

赤字リストラが行われる背景には、業績不振、需要低下、競争激化などがあります。
また、企業の経営戦略や市場環境の変化により、利益が見込めなくなった事業部門の縮小や撤退を余儀なくされることも少なくありません。
人員整理や工場の閉鎖が行われ、コスト削減を図ります。


リストラ後、業績は回復する?

2017年にStrategy& 東京オフィス Fit for Growth チームが報告した「データで考える構造改革:人員整理とその後の業績回復はどう関係するか」を見てみましょう。
この報告はリーマンショック以降の2009年~2014年にかけて、一度に100人を超える大規模国内リストラ(希望・早期退職募集)を行った日本国内の上場企業134社について、その後の業績変動を追跡しています。

リストラを行った企業のうち、69社は人員整理の翌年度 からすぐに業績を回復しました。
9社はすぐには 業績を回復できなかったものの、その後2~7年をかけて利益向上に 成功しています。
合わせると、実は6割近い企業はリストラ後に業績回復し、人員整理前より高い水準の利益を維持しています。

一方、残念ながら業績が回復していない残りの4割の企業についてです。
29社(22%)は、現在も業績低迷を続けています。
このうち、27社(21%)については苦心の改革にもかかわらず、業績が改革前よりも下降し低迷を続けています。

そして残る27社(20%)は、すでに独立した上場企業としては存在していません。
多くは改革をしたにもかかわらず、他社に吸収または統合されるか、買収され上場廃止となるなど、経営主体がすでに変わっているのです。

まとめ

希望退職の実施は、企業の経営戦略上のリストラの一環として行われます。
希望退職はコスト削減や組織再編成に有効であり、適切に活用されれば企業業績や株価にポジティブな影響を与えることができます。
しかし一方で、希望退職は従業員の士気低下やスキル流出というデメリットも伴います。

では希望退職をすれば業績は回復するのか?というと、回復する企業は全体の6割程度です。
失敗した場合はさらなる業績の低下、他社による吸収合併などにつながる場合もあります。

もし今、希望退職や退職勧奨などに直面している。
転職するのは年齢やスキル的に厳しそう。
退職するほどの決定打がない。
などの理由で退職に応じるかどうか迷っている場合は、企業の財務状況と今後の経営戦略を確認してください。
もし経営赤字で今後の具体的な経営方針がない場合は、割増退職金をもらえるうちに辞めてしまうことも視野に入れる必要があります。


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